AIブームの光と影RPAの教訓から考える「真のAI活用戦略」
- 伊賀上真左彦

- 5月28日
- 読了時間: 4分
RPAの教訓から考える「真のAI活用戦略」
1. はじめに:Microsoft「Agent Skills」の進化と拭えない疑問
先日、Microsoft がPython向けエージェントフレームワークにおいて、エージェントのスキル(Agent Skills)を「ファイル」「インラインコード」「クラス」の3種類で一元管理・組み合わせできる新機能を発表しました。
これにより、開発者はより柔軟に高度なAIエージェントを構築できるようになります。しかし、ここで一つの大きな疑問が浮かびます。
「実務において、このレベルのAI機能を使いこなせる人が、どれだけいるのだろうか?」
という点です。
2. RPAブームの教訓:「自動化の壁」
思い返せば、10年弱前に「RPA(業務自動化)ブーム」が巻き起こりました。
当時は、多くの企業が高額なRPAツールを導入し、「定型業務の自動化によって生産性革命が起こる」と期待されていました。しかし短期間でブームは終わり、現在は使用を停止、縮小している企業が大半です。
確かに、一部の仕事は効率化しました。しかしRPAを維持するため、莫大なコストが必要となりました。
「自動化したはずなのに、逆にコストが増える」
という皮肉な状況が、多くの現場で起きたのです。
3. 今回のAIブームは「壁」を超えられるか?
今回の生成AIブームを見たとき、私は「RPAが超えられなかった壁」を超える可能性を感じました。
実際に、
・文章作成
・コーディング
・画像生成
・動画生成
・マーケティング
・コンサルティング支援
といった領域では、既に大きな変化が起きています。
特に、知的生産性の高いクリエイティブ業務では、AIは明らかに革命的です。
しかし一方で、一般的な企業業務全体を見ると、「まだそこまで劇的な変化は起きていない」というのも現実ではないでしょうか。
もちろん、今後数年かけて影響を受ける業界や職種は増えていくでしょう。
ただし、前述した「Agent Skills」のような高度なAIエージェント運用になると、一般社員が扱うには難易度が高すぎる可能性があります。
結局、一部の高度IT人材に依存する構造になれば、RPAと同じ問題が再発する危険性があります。
4. 「全社AI化」ではなく「二極化戦略」が必要
現在、多くの企業が「全社員でAI活用を推進しよう」としています。
しかし実際には、AIとの相性が良い仕事と、そうでない仕事が明確に存在します。
そのため、今後は「全社一律」ではなく、業務特性ごとに戦略を分ける必要があるのではないでしょうか。
区分対象業務
AI戦略効果が高い仕事
企画、開発、マーケティング、文章作成、分析業務AIを前提とした働き方へ変革。「AIファースト」を積極推進
効果が限定的な仕事
定型業務、厳格な機密業務、高い監査性が必要な業務活用範囲を限定。情報漏洩・誤動作リスク管理を優先
重要なのは、「AIを使うこと」そのものではありません。
「どこに使うべきで、どこでは使わないべきか」を判断することです。
5. AIが生み出す「悪い属人化」
業務の属人化には、「良い属人化」と「悪い属人化」があります。
良い属人化
高度なスキルや専門性によって、高い付加価値を生み出している状態。
例:
・熟練エンジニア
・優秀な営業
・高度専門職
・職人的クリエイター
悪い属人化
本来は単純な仕事なのに、担当者しか理解できない複雑な仕組みになっている状態。
そして、AI活用では後者が大量発生する危険があります。
例えば、
・大して効果のない業務を無理にAI化する
・必要以上に複雑なプロンプトを組む
・作成者しかメンテできない
といったケースです。
完全自動化できるならまだしも、開発した人間がAIの動きを監視し、補助しなければまともに運用できないAIも存在します。
これは、RPA時代に多くの企業が経験した問題と本質的に同じです。
現状AIは、値上げ、定額制の廃止、将来の供給制限などが続いています。無駄にAI化したうえ、そのAIが使えなくなったとき、何が起こるでしょう?
6. 結論:「AIで何をやらないか」が重要になる
AIは非常に強力なツールです。
しかし、魔法の杖ではありません。
RPAの失敗を繰り返さないためには、
「AIで何でも自動化する」
のではなく、
「本当にAIが効果を発揮する領域を見極める」
ことが重要になります。
これから企業に求められるのは、単なるAI導入ではありません。
・どこをAI化するか
・どこを人間中心で残すか
・どこまで複雑化を許容するか
・誰が運用責任を持つのか
を冷静に判断する「経営戦略」と「組織設計」です。
本当に重要なのは、
「AIを導入すること」ではなく、
「AIを制御できること」だと思います。





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