AIは効率化ではなく、自分と組織の可能性を広めるために使え!


AIを使うと、仕事は速くなります。
文章作成、情報整理、データ分析、プログラミングなど、これまで人間が時間をかけていた作業を、AIが支援してくれるようになりました。
しかしその一方で、AIに仕事を任せ続けることにより、人間の能力が低下する可能性も指摘されています。
AI使用後、医師の腺腫検出率が6ポイント低下
大腸内視鏡検査にAIを導入した医療機関を対象とする研究で、興味深い結果が報告されました。
ポーランドの4施設に所属する、経験豊富な内視鏡医19人の検査を分析したところ、AI導入前には28.4%だった非AI検査時の腺腫検出率が、AI導入後には22.4%まで低下しました。
AIを使わずに検査した際の腺腫検出率が、6.0ポイント低下したことになります。導入前と比べると、相対的には約21%の低下です。
ただし、この研究は観察研究です。AIの利用が技能低下の直接的な原因だったと断定することはできません。検査数の増加による疲労など、別の要因が影響した可能性もあります。
それでも、AIへの依存によって人間の注意力や判断力が弱まる「デスキリング」のリスクを考えるうえで、重要な問題提起です。
参考:[Endoscopist deskilling risk after exposure to artificial intelligence in colonoscopy(PubMed)](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40816301/)
AIによるデスキリングを完全に防ぐことは難しい
AIの利用によって、それまで人間が持っていた技能が低下する現象は「デスキリング」と呼ばれます。
しかし、私はデスキリングそのものを完全に防ぐことは難しいと考えています。
新しい道具が普及すれば、それまで必要だった技能の一部が使われなくなります。これはAIに限った話ではありません。
自動車が普及すれば、長距離を歩く機会は減ります。電卓を使えば暗算する機会が減り、カーナビを使えば道を記憶する必要も少なくなります。
だからといって、すべての便利な道具を手放し、以前の方法に戻るべきだとは思いません。
大切なのは、失われるスキルを惜しみ続けることではありません。
失われるスキル以上の速さで、新しいスキルを身につけることです。
AIは「今の仕事を速くする道具」なのか
多くの人や企業は、AIを業務効率化のために使っています。
議事録を短時間で作る。
メールの下書きを作る。
資料作成やデータ入力を自動化する。
もちろん、こうした使い方にも価値があります。
しかし、これまで1時間かかっていた仕事を30分で終わらせても、残った30分で同じような仕事を増やしているだけでは、生み出す価値は大きく変わりません。
コスト削減や時間短縮は重要です。しかし、それだけで新しい売上や事業、顧客価値が生まれるとは限りません。
AI活用の成果を「何時間削減できたか」だけで測っている限り、その可能性を十分に生かすことはできないのです。
AIで時給1,500円の仕事を速くするだけでよいのか
世の中には、時給1,500円の仕事もあれば、時給10万円の仕事もあります。
これは、仕事の優劣を示しているわけではありません。
市場で評価される希少性や専門性、負う責任、生み出す成果が異なるということです。
今の仕事を20%速くすることは大切です。しかし、それ以上に考えるべきことがあります。
> AIを使うことで、これまでできなかったどのような仕事ができるようになるのか。
今の仕事を効率化するだけでは、自分が提供できる価値の範囲は大きく変わりません。
一方、AIを使って新しい知識を学び、別の専門分野と自分の経験を組み合わせれば、これまでとは異なる仕事を生み出せます。
エンジニアが経営を学ぶ。
営業担当者がデータ分析を身につける。
人事担当者が業務システムを設計する。
専門家が自分の知識を書籍や研修、サービスへ展開する。
こうした使い方こそ、AIが持つ本当の価値だと思います。
そして、考えるべきなのは時給だけではありません。
AIを使って、自分が本当にやりがいを感じられる仕事へ近づくことも大切です。「やりがい」は、集中力を高める重要な要素でもあります。
今の仕事を20%速くすることは、決して間違いではありません。
しかし、効率化だけを追い続ければ、現在の仕事の多くがAIに代替され、やがて人間が担当する役割そのものが縮小する可能性があります。
だからこそ、AI活用で本当に目指すべきものは、単なる効率化ではありません。
より価値の高い仕事へ移ること。
自分がやりがいを感じられる仕事に挑戦すること。
AIは、今の仕事を少し速くこなすためだけの道具ではありません。
自分ができる仕事と、行ける場所を広げるための道具なのです。
来月発売!よろしくお願いいたします。











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