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「運動する時間」を新しく作らなくていい

執筆者の写真: 伊賀上真左彦
伊賀上真左彦
8月30日
読了時間: 7分

集中力を高める運動術――忙しい人ほど




※本記事をAIで動画化しました



「集中力を高めたい」と考えたとき、多くの人は仕事術や勉強法を思い浮かべます。

しかし、集中力は頭だけの問題ではありません。


睡眠、食事、そして運動

この3つによって体調を整えることが、安定した集中力を発揮するための土台になります。

運動は、睡眠不足のように「昨日運動しなかったから今日はまったく集中できない」というほど即効性のある要素ではありません。


その代わり、長期的には体力や気分、睡眠、ストレスへの耐性などを整え、ディープワークを続けられる身体を作る役割を担っています。


そして重要なのは、毎日ジムに通ったり、何時間も走ったりする必要はないということです。忙しい人ほど、日常生活の中に運動を組み込むことをおすすめします。



運動すると、なぜ集中しやすくなるのか

運動したあと、

  • 「なんとなく頭がスッキリした」

  • 「気持ちが前向きになった」

という経験がある人は多いと思います。


これは単なる気分の問題ではありません。


適度な運動を継続すると、ストレスに関係する身体の反応が整いやすくなり、緊張した状態からリラックスした状態へ戻りやすくなります。


また、運動によってセロトニン、ドーパミン、エンドカンナビノイドなど、気分や意欲に関係するさまざまな働きが活性化します。


さらに、学習や記憶に関係するBDNF(脳由来神経栄養因子)の働きも、運動と関係していることが知られています。


つまり運動は、単純に「筋肉をつけるもの」ではありません。

頭の中のざわつきを減らし、目の前の仕事に意識を向けやすい状態を作る手段でもあるのです。



運動は睡眠にもつながる

集中力を考えるうえで、もう一つ見逃せないのが睡眠です。


日中に適度に身体を動かしておくと、夜には心地よい疲労感が生まれます。


本書では、とくに少し息が弾む程度の有酸素運動や軽い筋力トレーニングが、睡眠の質を整えることと関連している点を紹介しました。


ここで面白いのは、運動 → 睡眠 → 翌日の集中力という連鎖が起きることです。


集中力だけを直接上げようとするのではなく、身体全体の状態を整えた結果として集中しやすくする。


これが「集中力ファースト」の考え方です。



では、どれくらい運動すればいいのか

一つの目安になるのがWHO(世界保健機関)の推奨量です。


本書では成人の運動量の目安として、

  • 中強度の有酸素運動:週150~300分

  • または高強度の有酸素運動:週75~150分

  • 主要な筋肉を使う筋力トレーニング:週2日以上


を紹介しています。


中強度というのは、たとえば「会話はできるけれど、歌うのは難しい」程度。

高強度になると、息がかなり上がり、短い言葉しか話せない程度が一つの目安になります。


ただし、この数字を見て、

「そんな時間はないよ」

と思う人もいるでしょう。


その感覚はよくわかります。仕事でディープワークを確保し、睡眠時間も確保し、そのうえ毎日運動――。


全部を別々の時間として確保しようとすると、1日が48時間くらい必要になってしまいます。


そこで重要になるのが、「運動のための時間を新しく作らない」という発想です。



おすすめは「インターバル速歩」

忙しいビジネスパーソンにおすすめしたいのが、インターバル速歩です。

これは信州大学の能勢博氏らの研究グループによって開発された運動法で、

3分間の速歩+3分間のゆっくり歩き

を交互に繰り返します。


速歩は「少しキツい」と感じる程度。

ゆっくり歩く時間は、呼吸を整えるイメージです。


この方法の最大のメリットは、

特別な器具も、特別な場所も必要ないこと。

通勤でもできます。

買い物でもできます。

駅から会社まで歩く時間でも構いません。


「この交差点からあの橋までは速く歩こう」

「あそこから駅までは普通に歩こう」

といった具合です。


毎回ストップウォッチできっちり3分を測る必要もありません。

日常の移動を「速く歩く区間」と「ゆっくり歩く区間」に分ければいいのです。


これなら、「運動する時間がない」という問題をかなり解消できます。



通勤そのものをトレーニングに変えてしまう

私はこの発想が非常に重要だと思っています。


運動をするために、

  • 仕事を終える

  • ジムへ移動する

  • 着替える

  • 運動する

  • シャワーを浴びる

  • 帰宅する


となると、かなり大掛かりです。


もちろんジムが好きな人はそれで構いません。


しかし、運動が長続きしない人の場合、問題なのは運動そのものよりも、「始めるまでのハードル」だったりします。


だったら、最初から毎日やっている行動と合体させてしまえばいい。

たとえば、「駅まで歩く」という行動はもともと存在します。


そこに、「途中の5分だけ速く歩く」を追加する。


これだけでも、ゼロから新しい運動習慣を作るより、圧倒的に続けやすくなります。



上半身は「小さな運動」で補う

インターバル速歩は、下半身や心肺機能を鍛えるには優れています。


一方で、デスクワークで重要になる肩、背中、胸などの筋肉への負荷は十分とは言えません。


そこで私は、小さな運動を日常生活に組み込む方法をおすすめしています。


たとえば、

  • 帰宅してカバンを置いたら腕立て伏せ5回

  • 歯磨きのあとにスクワット5回

  • コーヒーを淹れている間に軽くダンベルを持つ

といった方法です。5回でも構いません。


大切なのは、「今日は30回できた」ではなく、「やるかどうか迷わなくなった」という状態を作ることです。


これはディープワークと同じです。

毎回「今日は集中しようかな」と考えていたら続きません。

時間と行動を決め、習慣にしてしまう。

運動も同じです。



会社にジムがあるなら、遠慮なく使う

最近では、社内に簡単なトレーニングスペースやジムを用意している企業も増えています。

ところが、せっかく設備があるのに、ほとんど利用されていないケースも珍しくありません。


非常にもったいない話です。


本書では目安として、週2回程度、20~30分ほどの全身筋トレを取り入れる方法も紹介しています。


仕事中に30分ジムへ行くと、「サボっているようで気が引ける」と思う人もいるかもしれません。


しかし、運動によって気分を整え、集中力を回復し、その後の仕事の質が上がるなら、それは無駄な時間ではありません。

健康と集中力に対する投資です。



ただし、ディープワーク直前の激しい運動には注意

ここは少し注意が必要です。「運動すれば集中力が上がる」からといって、「ディープワークの直前に全力でトレーニングすれば、もっと集中できる」とは限りません。


激しい運動を行うと、筋疲労や全身の疲労が残り、その後の長時間の知的作業で集中しにくくなる場合があります。


そのため、ディープワーク直前に運動するのであれば、軽いウォーキングやストレッチ程度にしておく方が無難です。


強度の高い運動は、

  • ディープワークが終わったあと

  • 退社後

  • ディープワークを行わない日

などに分けてもいいでしょう。


要するに、運動と集中を戦わせないこと。両方が最大限機能するように時間を設計すればいいのです。




「歩く会議」もおすすめ

もう一つ、仕事と運動を組み合わせる方法としておすすめなのが、ウォーキングミーティングです。


会議室に座って話すのではなく、歩きながら話します。

本書ではMetaのマーク・ザッカーバーグやApple共同創業者スティーブ・ジョブズの例も紹介しました。


私自身もウォーキングミーティングを使うことがあります。


特に、

「会議室で話していてもアイデアが出ない」

「議論が行き詰まった」

というときには効果を感じます。


人間は不思議なもので、外を歩いて景色が変わると、思考も切り替わりやすくなります。

また、机を挟んで向かい合うよりも、同じ方向を向いて歩く方が会話の緊張感が薄れ、率直に話しやすくなることもあります。

「運動する時間がない」のなら、

会議そのものを運動にしてしまう。


これも一つの方法です。



集中力のための運動で、一番大切なこと

集中力を高めるために必要なのは、アスリートのような身体ではありません。


重要なのは、長時間、安定して仕事や勉強を続けられる身体を作ることです。


そのためには、いきなり毎朝10km走る必要はありません。


まずは、

通勤中に少し速く歩く。歯磨きのあとにスクワットをする。仕事に疲れたら10分歩く。会議の一部をウォーキングミーティングに変える。


そのくらいから始めれば十分です。


運動は「時間を消費するもの」ではありません。


気分を整え、睡眠を支え、集中力を維持することで、

その後の時間の質を高めるための投資です。


集中力を高めたいのであれば、頭だけを鍛えるのではなく、まず身体を整える。

睡眠、食事、そして運動。


この土台があってこそ、ディープワークで本来の力を発揮できるようになります。

 
 
 

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