「運動する時間」を新しく作らなくていい

集中力を高める運動術――忙しい人ほど

※本記事をAIで動画化しました
「集中力を高めたい」と考えたとき、多くの人は仕事術や勉強法を思い浮かべます。
しかし、集中力は頭だけの問題ではありません。
睡眠、食事、そして運動。
この3つによって体調を整えることが、安定した集中力を発揮するための土台になります。
運動は、睡眠不足のように「昨日運動しなかったから今日はまったく集中できない」というほど即効性のある要素ではありません。
その代わり、長期的には体力や気分、睡眠、ストレスへの耐性などを整え、ディープワークを続けられる身体を作る役割を担っています。
そして重要なのは、毎日ジムに通ったり、何時間も走ったりする必要はないということです。忙しい人ほど、日常生活の中に運動を組み込むことをおすすめします。
運動すると、なぜ集中しやすくなるのか
運動したあと、
「なんとなく頭がスッキリした」
「気持ちが前向きになった」
という経験がある人は多いと思います。
これは単なる気分の問題ではありません。
適度な運動を継続すると、ストレスに関係する身体の反応が整いやすくなり、緊張した状態からリラックスした状態へ戻りやすくなります。
また、運動によってセロトニン、ドーパミン、エンドカンナビノイドなど、気分や意欲に関係するさまざまな働きが活性化します。
さらに、学習や記憶に関係するBDNF(脳由来神経栄養因子)の働きも、運動と関係していることが知られています。
つまり運動は、単純に「筋肉をつけるもの」ではありません。
頭の中のざわつきを減らし、目の前の仕事に意識を向けやすい状態を作る手段でもあるのです。
運動は睡眠にもつながる
集中力を考えるうえで、もう一つ見逃せないのが睡眠です。
日中に適度に身体を動かしておくと、夜には心地よい疲労感が生まれます。
本書では、とくに少し息が弾む程度の有酸素運動や軽い筋力トレーニングが、睡眠の質を整えることと関連している点を紹介しました。
ここで面白いのは、運動 → 睡眠 → 翌日の集中力という連鎖が起きることです。
集中力だけを直接上げようとするのではなく、身体全体の状態を整えた結果として集中しやすくする。
これが「集中力ファースト」の考え方です。
では、どれくらい運動すればいいのか
一つの目安になるのがWHO(世界保健機関)の推奨量です。
本書では成人の運動量の目安として、
中強度の有酸素運動:週150~300分
または高強度の有酸素運動:週75~150分
主要な筋肉を使う筋力トレーニング:週2日以上
を紹介しています。
中強度というのは、たとえば「会話はできるけれど、歌うのは難しい」程度。
高強度になると、息がかなり上がり、短い言葉しか話せない程度が一つの目安になります。
ただし、この数字を見て、
「そんな時間はないよ」
と思う人もいるでしょう。
その感覚はよくわかります。仕事でディープワークを確保し、睡眠時間も確保し、そのうえ毎日運動――。
全部を別々の時間として確保しようとすると、1日が48時間くらい必要になってしまいます。
そこで重要になるのが、「運動のための時間を新しく作らない」という発想です。
おすすめは「インターバル速歩」
忙しいビジネスパーソンにおすすめしたいのが、インターバル速歩です。
これは信州大学の能勢博氏らの研究グループによって開発された運動法で、
3分間の速歩+3分間のゆっくり歩き
を交互に繰り返します。
速歩は「少しキツい」と感じる程度。
ゆっくり歩く時間は、呼吸を整えるイメージです。
この方法の最大のメリットは、
特別な器具も、特別な場所も必要ないこと。
通勤でもできます。
買い物でもできます。
駅から会社まで歩く時間でも構いません。
「この交差点からあの橋までは速く歩こう」
「あそこから駅までは普通に歩こう」
といった具合です。
毎回ストップウォッチできっちり3分を測る必要もありません。
日常の移動を「速く歩く区間」と「ゆっくり歩く区間」に分ければいいのです。
これなら、「運動する時間がない」という問題をかなり解消できます。
通勤そのものをトレーニングに変えてしまう
私はこの発想が非常に重要だと思っています。
運動をするために、
仕事を終える
ジムへ移動する
着替える
運動する
シャワーを浴びる
帰宅する
となると、かなり大掛かりです。
もちろんジムが好きな人はそれで構いません。
しかし、運動が長続きしない人の場合、問題なのは運動そのものよりも、「始めるまでのハードル」だったりします。
だったら、最初から毎日やっている行動と合体させてしまえばいい。
たとえば、「駅まで歩く」という行動はもともと存在します。
そこに、「途中の5分だけ速く歩く」を追加する。
これだけでも、ゼロから新しい運動習慣を作るより、圧倒的に続けやすくなります。
上半身は「小さな運動」で補う
インターバル速歩は、下半身や心肺機能を鍛えるには優れています。
一方で、デスクワークで重要になる肩、背中、胸などの筋肉への負荷は十分とは言えません。
そこで私は、小さな運動を日常生活に組み込む方法をおすすめしています。
たとえば、
帰宅してカバンを置いたら腕立て伏せ5回
歯磨きのあとにスクワット5回
コーヒーを淹れている間に軽くダンベルを持つ
といった方法です。5回でも構いません。
大切なのは、「今日は30回できた」ではなく、「やるかどうか迷わなくなった」という状態を作ることです。
これはディープワークと同じです。
毎回「今日は集中しようかな」と考えていたら続きません。
時間と行動を決め、習慣にしてしまう。
運動も同じです。
会社にジムがあるなら、遠慮なく使う
最近では、社内に簡単なトレーニングスペースやジムを用意している企業も増えています。
ところが、せっかく設備があるのに、ほとんど利用されていないケースも珍しくありません。
非常にもったいない話です。
本書では目安として、週2回程度、20~30分ほどの全身筋トレを取り入れる方法も紹介しています。
仕事中に30分ジムへ行くと、「サボっているようで気が引ける」と思う人もいるかもしれません。
しかし、運動によって気分を整え、集中力を回復し、その後の仕事の質が上がるなら、それは無駄な時間ではありません。
健康と集中力に対する投資です。
ただし、ディープワーク直前の激しい運動には注意
ここは少し注意が必要です。「運動すれば集中力が上がる」からといって、「ディープワークの直前に全力でトレーニングすれば、もっと集中できる」とは限りません。
激しい運動を行うと、筋疲労や全身の疲労が残り、その後の長時間の知的作業で集中しにくくなる場合があります。
そのため、ディープワーク直前に運動するのであれば、軽いウォーキングやストレッチ程度にしておく方が無難です。
強度の高い運動は、
ディープワークが終わったあと
退社後
ディープワークを行わない日
などに分けてもいいでしょう。
要するに、運動と集中を戦わせないこと。両方が最大限機能するように時間を設計すればいいのです。
「歩く会議」もおすすめ
もう一つ、仕事と運動を組み合わせる方法としておすすめなのが、ウォーキングミーティングです。
会議室に座って話すのではなく、歩きながら話します。
本書ではMetaのマーク・ザッカーバーグやApple共同創業者スティーブ・ジョブズの例も紹介しました。
私自身もウォーキングミーティングを使うことがあります。
特に、
「会議室で話していてもアイデアが出ない」
「議論が行き詰まった」
というときには効果を感じます。
人間は不思議なもので、外を歩いて景色が変わると、思考も切り替わりやすくなります。
また、机を挟んで向かい合うよりも、同じ方向を向いて歩く方が会話の緊張感が薄れ、率直に話しやすくなることもあります。
「運動する時間がない」のなら、
会議そのものを運動にしてしまう。
これも一つの方法です。
集中力のための運動で、一番大切なこと
集中力を高めるために必要なのは、アスリートのような身体ではありません。
重要なのは、長時間、安定して仕事や勉強を続けられる身体を作ることです。
そのためには、いきなり毎朝10km走る必要はありません。
まずは、
通勤中に少し速く歩く。歯磨きのあとにスクワットをする。仕事に疲れたら10分歩く。会議の一部をウォーキングミーティングに変える。
そのくらいから始めれば十分です。
運動は「時間を消費するもの」ではありません。
気分を整え、睡眠を支え、集中力を維持することで、
その後の時間の質を高めるための投資です。
集中力を高めたいのであれば、頭だけを鍛えるのではなく、まず身体を整える。
睡眠、食事、そして運動。
この土台があってこそ、ディープワークで本来の力を発揮できるようになります。










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