サム・アルトマンに学ぶ「集中力」と「成長」――午前中の数時間を守る人が、長期で強くなる


今回は、書籍『集中力ファースト FOCUS FIRST』の中でも触れさせていただきました、OpenAIのCEO、サム・アルトマンについて書かせていただきます。
ChatGPTを開発した企業のトップが行っている効率化術。そこには、私たちがAI時代を生き抜くための重要なヒントが書かれています。
OpenAI CEOのサム・アルトマンは、自身のブログで「生産性」や「成功」についてかなり具体的に書いています。
読んでいて興味深いのは、彼の効率化が「メールを速く返す」「仕事を詰め込む」といった単純な時短術ではないことです。
中心にあるのは、大きく2つ。
「集中力」と「成長」です。
集中できる時間を守り、その時間を重要な仕事に使う。
そして、そこで身につけた能力を何年、何十年と積み重ね、自分自身を複利で成長させる。
この2つが、サム・アルトマンの仕事術を理解するうえで重要なキーワードだと思います。
ここで注意していただきたいのは、彼はブログの中で「ディープワーク」という言葉を使っていません。ただ、内容としては「午前中を集中ブロックする」「他人を遮断する」など、ディープワークそのものであることがわかります。
彼の効率化法は、医師である母親から学んだ部分もあると思われますし、「ディープワーク」など欧米でブームとなった手法を的確に取り込み、彼、独自の方法に昇華させています。
彼の効率化法は、「ディープワーク」の応用的な使い方の一例、と見ると良いと考えます。
【午前中の数時間を誰にも渡さない】
アルトマンは、自身のブログ「Productivity」で、1日の中でも「朝の最初の数時間」が最も生産性の高い時間だと書いています。
Productivity - Sam Altman
そして、この時間には他人との予定を入れません。
会議はできるだけ午後に回します。
これは非常に重要な考え方です。
多くの会社員は、朝パソコンを開くと、
メールを確認する。チャットに返信する。会議に参加する。問い合わせに対応する。
こうして、最も頭が動く時間を「他人の仕事」に使ってしまいます。
気がつけば午前中が終わり、自分が本当に考えなければならない仕事は午後へ。
しかし午後になると疲れている。結局、重要な仕事は翌日へ持ち越されます。
アルトマンは逆です。
最も集中できる時間を最も重要な仕事に使い、人とのコミュニケーションはその後に回す。
つまり、
「空いている時間に重要な仕事をする」
のではなく、
「重要な仕事のために、先に時間を確保する」
という発想です。
これは、集中力を高めるうえで非常に合理的な方法だと思います。
【集中力より先に「何に集中するか」を決める】
ただし、朝から全力で働けばよいわけではありません。
アルトマンの生産性論で、私が特に重要だと思うのが、
「何をやるか」
を非常に重視している点です。
彼は、価値のない方向へどれだけ速く進んでも意味がない、という趣旨を書いています。
つまり、仕事を高速化する前に、
「この仕事は、本当にやる価値があるのか?」
を考えなければならない。
メールを100通高速で処理する能力よりも、会社の将来を変える企画を1つ考える能力のほうが、はるかに大きな価値を生むことがあります。
ところが、多くの人は逆をやります。
簡単な仕事から片づける。届いたメールから返信する。頼まれた仕事から始める。
これでは、自分の集中力を他人に配っているようなものです。
集中力は有限です。
だからこそ、一番良い時間を、一番価値の高い仕事に投入する。
アルトマンの仕事術は、ここが徹底しています。
【集中力は「根性」ではなく、身体から作る】
もう一つ面白いのは、アルトマンが生産性を精神論だけで考えていないことです。
睡眠、運動、食事。
こうした身体のコンディションを非常に重視しています。
特に本人が「生産性に影響する身体的要因で最も重要」と位置づけているのが睡眠です。
彼は寝室を、
涼しくする。暗くする。静かにする。
といった環境に整えています。
良いマットレスにも投資し、寝る数時間前には大量に食べないようにし、アルコールを飲まないほうが睡眠の質が良くなるとも書いています。
つまり、
睡眠時間を削る
仕事時間を増やす
生産性が上がる
ではありません。
むしろ、
しっかり眠る
翌朝に頭が働く
最重要仕事に集中する
短時間でも大きな成果を出す
という考え方です。
集中力を研究している私としても、この発想は非常に共感できます。
仕事時間を増やす前に、「集中できる状態」を作る。
こちらのほうが重要です。
【朝は身体も「仕事モード」にする】
アルトマンは、多くの朝にフルスペクトルLEDライトを10〜15分ほど使っているとも書いています。
本人にとっては、これがかなり効果的だったそうです。
これは、日光に近い光を浴びることで脳内でセロトニンを分泌し、覚醒とやる気を高めるため、と考えられます。私は毎朝、日光を浴びながら短い散歩を行うことを推奨しています。しかし散歩の時間を取るのが難しい場合、アルトマンのようにライトを使うのも効果があるかもしれません。特に日光を浴びることが難しい天候の日は良いかもしれませんね。
もちろん、これは「全員が同じことをすれば集中力が上がる」という話ではありません。
本人自身も、食事や身体管理について、自分に合った方法が他人にも最適とは限らないという姿勢を取っています。
重要なのは具体的な商品ではなく、
「朝になったら、自動的に最高の集中状態になる」
と考えず、身体を仕事モードに切り替える工夫をしている点でしょう。
集中力は気合ではありません。
環境と身体の状態に大きく左右されます。
【運動は、集中力への投資】
睡眠に次いでアルトマンが重視している身体要因が運動です。
本人はいくつもの運動方法を試した結果、週3回程度のウェイトトレーニングと、ときどき行う高強度インターバルトレーニングが自分には合っていたとしています。
ここでも大切なのは、
「サム・アルトマンと同じ運動をすること」
ではありません。
運動を仕事とは別のものとして考えていないことです。
よく眠る。身体を動かす。体調を整える。
その結果として、
考える力が上がる。集中しやすくなる。良い仕事ができる。
つまり健康管理そのものが、仕事の一部になっています。
【食事も「集中できる状態」を基準に考える】
アルトマンの食生活は少し独特です。
本人は朝食をほとんど食べず、朝のエスプレッソを除けば、結果として1日15時間程度食べない時間ができると書いています。
これはいわゆる断食法の一つで、健康面で効果があるとも、集中力を高める場合があるとも言われます。ただし、本人も「多くの人にとって最適とは思わない」と明記しています。
一般に妊婦や成長期の子どもにとっては有害とされます。
したがって、「朝食を抜けば仕事ができるようになる」と解釈するのは間違いでしょう。
むしろ参考になるのは、
「何を食べると自分のパフォーマンスが上がるのか」
を観察していることです。
アルトマンは、大量の砂糖を摂取すると調子が悪くなるため、できるだけ避けていると書いています。血糖値スパイク、と呼ぶ場合もありますが、食後、血糖値の上下により、眠気、頭痛、過食などの影響が出るケースがあります。アルトマンはこれを把握し、適切にコントロールしていると考えられます。
そして、甘いものを我慢するよりも、そもそも家にジャンクフードを置かないようにしています。
ここにも「意志力に頼らず、環境を変える」という考え方が見えます。
集中力についても同じです。
スマホを見ないように頑張るのではなく、スマホを別の部屋に置く。
メールを気にしないように頑張るのではなく、通知を切る。
お菓子を我慢するのではなく、家に置かない。
人間の意志力より、環境を設計したほうが強い。
非常に実践的な考え方です。
【そして「集中力」が「成長」につながる】
ここからが、アルトマンの考え方で最も面白いところです。
集中力を高める目的は、今日の仕事を早く終わらせることだけではありません。
長期的に、
「自分自身を成長させる」
ためです。
アルトマンは「How To Be Successful」の最初に、
「Compound yourself」
という考え方を掲げています。
直訳すれば、
「自分自身を複利成長させる」
という意味です。
複利という言葉は、一般には投資で使われます。
100万円を運用して利益が出る。その利益も含めて、さらに運用する。すると、時間がたつほど増加速度が大きくなる。
アルトマンは、これと同じことが人間にも起こると考えています。
この福利成長という考え方は、世界で2500万部を突破した「Atomic Habits ジェームズ・クリア 複利で伸びる1つの習慣」で提唱された考え方と非常に類似しています。
アルトマンもこの書籍を読んだか、もしくは自分自身の経験から、同じ考えにたどり着いたのかもしれません。
【人間の能力も複利で増える】
例えば、Excelを覚える。
次にVBAを覚える。
その知識がある状態でPythonを覚える。
さらにAIを使えるようになる。
そして、それらを組み合わせて業務そのものを自動化する。
これは単純な足し算ではありません。
Excel+VBA+Python+AI+業務知識。
複数の能力が組み合わされることで、一人の人間が生み出せる成果が何倍にもなることがあります。
アルトマンは、キャリアが進むにつれて「同じ1単位の仕事から、より多くの結果を生み出せる状態」を目指すべきだとしています。
そのためのレバレッジとして、技術、資本、ブランド、ネットワーク、人のマネジメントなどを挙げています。
つまり重要なのは、
「去年より忙しく働くこと」
ではありません。
「去年より、自分の1時間の価値を高くすること」
です。
【20年働いても2年目と同じでは意味がない】
アルトマンはかなり刺激的なことも書いています。
20年間経験した人と、2年間経験した人の仕事の成果がほとんど変わらないようなキャリアは避けるべきだ、という趣旨です。
これは厳しい言葉ですが、本質を突いていると思います。
「20年間働いた」
ことと、
「20年間成長した」
ことは同じではありません。
同じ仕事を20年間繰り返せば、「1年分の経験を20回繰り返した」状態になる可能性もあります。
一方で毎年、
新しい技術を学ぶ。資格を取る。新しい仕事に挑戦する。人脈を広げる。文章を書く。人に教える。AIを使う。
と続けていけば、10年後には大きな差になります。
これが「複利」です。
【集中力と成長は、実は同じ話】
ここまで見ると、「集中力」と「成長」が一本につながります。
しっかり眠る。
朝、頭が働く状態を作る。
午前中の数時間を守る。
最も重要な仕事に集中する。
難しい仕事に挑戦する。
知識とスキルが増える。
できる仕事のレベルが上がる。
1時間で生み出せる価値が高くなる。
さらに重要な仕事に挑戦できる。
この循環を何年も続ける。
これこそが、アルトマンの言う「複利成長」なのではないでしょうか。
集中力は、その日の生産性を上げるためだけのものではありません。
人生全体の成長速度を上げるための能力でもあります。
【忙しい人ほど成長するとは限らない】
ここで一つ注意したいことがあります。
毎日10時間、12時間働いているからといって、必ず成長するわけではありません。
メール。チャット。会議。資料修正。定型作業。
こうした仕事だけを長時間続けても、忙しくはなりますが、能力が大きく伸びるとは限りません。
一方、
毎朝2時間、新しい技術を学ぶ。難しい企画を考える。本を書く。プログラムを作る。新しいビジネスを考える。
こうした時間を何年も確保すると、能力はかなり変わるでしょう。
だから私は、
「何時間働いたか」
より、
「何時間、本気で頭を使ったか」
のほうが重要だと考えています。
【午前中の集中力は、未来の自分への投資】
アルトマンのブログを読んでいると、効率化についての考え方が非常に長期的です。
朝の2〜3時間を守る。
一見すると、小さな工夫です。
しかし、その時間を10年間、
重要な仕事。勉強。思考。創造。スキル習得。
に投入したらどうなるでしょうか。
1日2時間なら、年間で数百時間。
10年間なら数千時間です。
しかも、そこで習得した知識やスキルは、次の学習を速くします。
これが複利です。
昨日より少しだけ仕事ができるようになる。
今日覚えた知識を、明日の仕事に使う。
その仕事から、また新しい経験を得る。
これを何十年も繰り返す。
すると、ある時点から人によって生み出せる成果に大きな差が生まれます。
【集中力は、人生を成長させる資産になる】
アルトマンの考え方を私なりにまとめると、こうなります。
まず、睡眠・運動・食事を整える。
次に、1日の中で最も集中できる時間を守る。
そして、その時間を「重要だが難しい仕事」に投入する。
そこで新しい能力を身につける。
その能力を使って、さらに難しい仕事へ進む。
これを長期間続ける。
私は、これこそ「集中力ファースト」の考え方にも非常に近いと思っています。
集中力は、その日の仕事を速く終わらせるためだけのテクニックではありません。
集中力を使って難しいことに挑戦し続ければ、
知識が増える。スキルが増える。経験が増える。人脈が増える。できる仕事が増える。
そして、自分自身の市場価値まで高まっていきます。
だから、午前中の数時間を軽く考えてはいけない。
その数時間は、
「今日の仕事を終わらせる時間」
であると同時に、
「未来の自分を作る時間」
でもあるのです。










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