東大生の74%が「勉強は楽しい」――成果を生むのは、努力の量より“没頭できる環境”かもしれない


東大生250人を対象としたアンケートで、「勉強を楽しんでいる」と答えた人は74%に上ったそうです。
興味深いのは、回答者の多くが最初から勉強好きだったわけではないことです。紹介記事によれば、「その科目を楽しむための努力をしている」人が多いといいます。
これは、勉強を単なる苦役として我慢するのではなく、関心を持てる切り口や取り組み方を自分で見つけているということでしょう。
「勉強が楽しい」の正体はフローかもしれない
この結果を考えるうえで参考になるのが、心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱した「フロー」です。
フローとは、目の前の活動に深く集中し、時間の経過や周囲のことを一時的に忘れるほど没頭している状態を指します。
勉強しているうちに疑問が次々と生まれ、気がつけば何時間もたっていた――。このような経験も、フローの一例と考えられます。
ただし、今回のアンケートではフローそのものを測定していません。そのため、「東大生が勉強を楽しめるのはフローに入っているからだ」と断定することはできません。あくまで、結果を説明する一つの仮説です。
命令と監視だけでは、深い集中は生まれにくい
フローに入りやすい条件として、次のような要素が知られています。
課題の難しさと自分の能力が釣り合っている
何を目指すのかが明確になっている
結果や進捗をすぐに確認できる
自分で行動を選んでいるという感覚がある
一方、「勉強しなさい」と一方的に命令され、常に監視されているような環境では、自律性を感じにくくなります。
もちろん、指示された勉強では絶対にフローに入れない、という意味ではありません。しかし、自分で目標や方法を選べる環境のほうが、内発的な意欲や深い集中につながりやすいと考えられます。
東大生の多くは、勉強を続ける過程で「自分なりに楽しむ方法」を身につけ、やらされる勉強を、自分で進める勉強へ変えていったのかもしれません。
「能力が5倍」ではなく、「ピークの時間を増やす」
フローについては、「能力が5倍になる」と紹介されることがあります。
この数字の出典としてよく挙げられるマッキンゼーの記事は、知的能力が一律に5倍になると実証した研究ではありません。望ましい職場環境にいる人の「ピーク時の生産性が、平均時の5倍」と仮定した試算です。
したがって、フローに入れば誰でも能力が5倍になる、と考えるのは適切ではないでしょう。
大切なのは倍率ではなく、集中しやすい条件を整え、質の高い時間を少しずつ増やすことです。学習におけるフローは、集中、意欲、粘り強さや学習成果などと関連することが研究されています。
東大生は、生まれつき他の人より能力が高かった――もちろん、その可能性も否定できません。しかし、能力差だけで説明するのではなく、もう一つ考えたいことがあります。それは、彼らが深く集中する習慣を身につけ、限られた勉強時間を密度の高いものにしていた可能性です。
フローの効果については「最大5倍」と紹介されることがありますが、これは知的能力が一律に5倍になるという意味ではありません。重要なのは、フローのような深い集中状態では、普段より高いパフォーマンスを発揮しやすくなるという点です。
集中の質が学習成果を左右することを示唆する国内の調査もあります。スマートフォンを持つ小学5年生から中学3年生までの約2万6000人を対象とした調査では、スマホを触りながら2~3時間勉強していた子どもと、30分だけ集中して勉強していた子どもの学力に、ほとんど差が見られませんでした。
これは「30分勉強すれば、必ず3時間分の成果が得られる」と証明した実験ではありません。しかし、勉強時間の長さだけでなく、どれだけ集中して取り組めたかが重要であることを示す、興味深い結果です。
東大生の高い成果の背景には、生まれつきの能力だけでなく、フローに入りやすい学び方を身につけ、集中力を有効に使っていたこともあるのではないでしょうか。
まとめ――勉強も仕事も、楽しめる人は強い
勉強も仕事も、苦痛に耐えながら続けるより、楽しんで取り組めるほうが成果につながる可能性は高まります。楽しさは集中を生み、集中は学習や仕事の質を高めるからです。
フローに入れるのは、スマホゲームや漫画、動画を楽しんでいるときだけではありません。条件を整えれば、勉強や仕事でも、時間を忘れるほど夢中になれます。
「やらなければならない」と我慢するだけではなく、「どうすれば面白くなるだろう」と考えてみる。自分で目標を決め、少し挑戦が必要な課題に、邪魔の入らない環境で取り組んでみる。
勉強にも仕事にも、フローを取り入れてみましょう。
楽しみながら深く集中できる時間が、これまで以上の成果を生み出してくれるかもしれません。










コメント