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仕事と勉強の効率を高める「ディープワーク」とは? 深い集中へ入る6つの実践プロセス

  • 執筆者の写真: 伊賀上真左彦
    伊賀上真左彦
  • 1 日前
  • 読了時間: 8分

2026/7/28


このたび私は、集中力を仕事や学習の成果へつなげる方法を体系化した書籍『集中力ファースト』を執筆しました。本記事では、その内容をもとに、ディープワークの考え方と実践方法を紹介します。


「ディープワーク」を現在の仕事術として定義し、広く普及させたのは、コンピューター科学者のカル・ニューポートです。ニューポートは、メールやSNSなどのデジタルな割り込みが増え、深く考える時間が失われていく状況に着目しました。そして2016年の著書『Deep Work』で、ディープワークを「注意をそらされることなく、認知能力の限界まで集中して取り組む知的活動」と定義しました。


ニューポートは、集中を妨げるものが増えるほど、深く集中できる能力は希少になり、同時にその価値が高まると指摘しています。ディープワークを習慣化すると、複雑な知識を短時間で習得しやすくなり、仕事の速度と質が向上します。さらに、重要な仕事へ意識を集中できるため、達成感や仕事の意味も感じやすくなります。


心理学では、集中力が高まると「自分」や「時間」に対する感覚が薄れ、幸福感や達成感を得やすくなるとされています。これが「フロー」や「ゾーン」と呼ばれる状態です。


ディープワークとは、このフローを偶然に任せるのではなく、時間・環境・行動を整えることで、仕事や勉強において意図したタイミングで再現しやすくする手法だといえます。


ディープワークは、通知や割り込みを遮断し、1つの知的作業に深く集中する働き方です。時間のブロック化、タスクの絞り込み、反復行動、助走タスク、集中の維持、振り返りという6つの実践プロセスを解説します。



現代の仕事や勉強では、メール、チャット、会議、スマートフォンなどが、私たちの注意を絶えず奪っています。


忙しく働いているのに、重要な仕事が進まない。長い時間勉強しているのに、内容が頭に残らない。その原因は、能力や努力の不足ではなく、「集中できる時間と環境」が設計されていないことかもしれません。


そこで役立つのが「ディープワーク」です。


ディープワークとは、外部からの刺激をできる限り遮断し、1つの難しい知的作業へ深く集中する働き方です。単に長時間机に向かうことではありません。理解、判断、記憶、創造といった脳の力を、今もっとも重要な対象へ集めることが目的です。



「集中すれば効率が5倍」に上がる?


マッキンゼーの調査では、経営層に「最高の状態では、平均的な時と比べてどの程度生産性が高かったか」と尋ねたところ、もっとも多かった回答が「5倍」でした。また、最高の集中状態で働く時間を20ポイント増やすと、全体の生産性が約2倍になる可能性があると試算されています。一般に、これがディープワークの効果の目安と考えられます。


ただし、これは「誰でも集中すれば必ず5倍になる」という実験結果ではありません。役割や目標が明確で、周囲との関係が良好で、仕事に意味を感じられるなど、条件が整った時のピークパフォーマンスについての回答と試算です。


重要なのは「5倍」という数字そのものではなく、集中できる条件の有無が、知的作業の質と速度を大きく左右するという点です。


- McKinsey & Company, [Increasing the ‘meaning quotient’ of work]




ディープワークを行えば、暗記や計算といった単純作業の効率が一律に5倍になるわけではありません。効果を発揮しやすいのは、事業設計、企画、新しいスキルの習得、プログラミングなど、深い思考と高度な集中を必要とする知的作業です。こうした作業の速度と質を大きく高める手法だと捉えてください。



ディープワークとフローの違いとはなにか


「フロー」は、時間を忘れるほど作業へ没頭している状態です。一方、ディープワークは、その状態が起こりやすくなるように時間、環境、行動を整えるプロセスです。


言い換えると、フローは「結果」、ディープワークは「準備と実行の仕組み」です。


毎回フローに入れるとは限りません。しかし、同じ時間、同じ場所、同じ手順で作業を始める習慣を作れば、深い集中を偶然に任せず、再現しやすくなります。



深い集中へ入る6つのプロセス


1.時間をブロック化する


最初に、ディープワークを行う時間をカレンダーへ入れます。


「時間が空いたら集中しよう」では、会議やメール処理に押し流されてしまいます。何時から何時まで行うかを先に決め、その時間へ会議、電話、連絡対応を入れないようにします。


1回のセッションは、長くても90~120分を上限の目安とします。慣れていない場合は、まず30分や60分から始めても構いません。ディープワークは1日3~4時間程度が現実的な上限であり、一日中続けるものではありません。無理に長時間行えば翌日の判断力や記憶力が低下します。1日かぎり長時間行うより、毎日1時間でも確実に行う方が、長期的に見れば大きな効果を期待できます。


Microsoft 365を使っている場合は、Viva Insightsの「フォーカス時間」を利用すると、集中時間を予定表へ確保し、Teamsの通知を抑えることができます。


Windows自体にも、ディープワーク用の機能が搭載されています。右下にある日時をクリックし、「フォーカス」を押してください。タイマーが起動し、その間全ての通知をカットします。



- Microsoft Support, [Focus with Viva Insights]



2.行うタスクを1つに絞る


確保した時間に取り組むタスクは、1つに絞ります。


「企画書を作る」「資格試験の応用問題を解く」「プログラムの設計を行う」など、理解、分析、判断、創造を必要とする重要な仕事を選びます。


メールを確認しながら資料を作る、といったマルチタスクは避けます。タスクを切り替えるたびに注意が分散し、元の思考へ戻るための時間が必要になるからです。



3.毎回同じ「反復行動」を行う


作業を始める直前に、毎回同じ小さな行動を行います。


例えば、机を整える、飲み物を用意する、軽く体を動かす、深呼吸をする、今日の目標をノートへ書く、といった行動です。


反復行動の役割は、脳に「これから集中する」と知らせることです。毎回同じ順番で繰り返すことで、気分や意志の強さに頼らず、集中へ入りやすくなります。



4.「助走タスク」から始める


いきなり難しい本題へ取りかかろうとすると、心理的な抵抗が生まれます。そこで、最初の10~20分は、本題に関係する簡単な作業から始めます。


例えば、次のような作業です。


- 関連資料を軽く読み返す

- 前回のメモを確認する

- 今日のゴールを1~2行で書く

- 企画書の見出しだけを並べる

- 必要なファイルやデータを整理する


これを「助走タスク」と呼びます。


反復行動が毎回ほぼ同じ「集中のスイッチ」であるのに対し、助走タスクは、その日に行う本題と関係する小さな作業です。「まず1つ進んだ」という感覚を作り、自然に本題へ移ります。



5.集中に入ったら余計なことをしない


集中が深まり始めたら、新しい作業を増やしません。


メールやチャットを確認する、別の資料を探し始める、思いついた別の仕事へ移る、といった行動を避けます。別の用事を思い出した場合は、短くメモするだけにして、今のタスクへ戻ります。


スマートフォンは通知を切るだけでなく、手の届かない場所へ移す方が安全です。パソコンを使う仕事では、作業に不要なアプリやタブを閉じ、連絡手段だけを一時的に遮断します。



6.1分間の振り返りを行う


セッションが終わったら、すぐ次の仕事へ移る前に、短い振り返りを行います。


ノートやデジタルメモへ、次の3点を1行ずつ書きます。


- 日付と時間

- 今回達成したこと

- 次回の目標


集中できなかった場合は、「どこで集中が切れたか」「次回は何を変えるか」も簡単に記録します。


振り返りの後は、脳を休ませます。別のディープワークを続ける場合は5~10分、それ以外の仕事へ移る場合は10~20分程度を休憩の目安にします。休憩中までメールや会議を詰め込まず、軽いストレッチ、飲み物、短い散歩などで緊張をゆるめましょう。



集中できる環境をどう作るか


ディープワークは、意志の強さよりも環境設計で決まります。理想的な「集中スペース」には、次の条件があります。


- 長く座っても負担の少ない椅子

- 作業しやすく、余計な物の少ない机

- 音、通知、人の動きなどの刺激が少ない

- 会話や連絡による割り込みを受けにくい


植物や自然の写真は、心を落ち着かせる助けになる場合があります。ただし、派手な植物や情報量の多い写真は、逆に注意を奪う可能性があります。机の端や少し離れた場所に、視界のノイズにならない程度に置くのが安全です。


個室がなくても、パーテーションを置く、午前中の一部を「会話を控える時間」にする、オンライン会議の場所を分けるなど、小さな工夫から始められます。



シャローワークと使い分ける


メール処理、情報収集、定型的な入力、簡単な連絡など、深い思考を必要としない仕事は「シャローワーク」と呼ばれます。


シャローワークが悪いわけではありません。仕事を進めるために必要な作業です。ただし、もっとも集中しやすい時間をシャローワークだけで使い切ると、重要な仕事が後回しになります。


集中しやすい時間帯にはディープワークを配置し、その前後にシャローワークをまとめます。深く考える時間と、人とつながる時間を分けることが大切です。


なお、ディープワーク直後の「休憩」とシャローワークは別物です。休憩は脳の緊張をゆるめる時間として確保してください。



まずは明日の60分を予約する


ディープワークを始めるために、特別な設備や強い意志は必要ありません。


まずは明日の予定表に、60分の集中時間を1つ入れてください。そして、取り組むタスクを1つだけ決め、通知を切り、簡単な助走タスクから始めます。


終了後に「達成したこと」と「次回の目標」を1行ずつ書けば、最初のセッションは完了です。


集中力は、気合で無理に引き出すものではありません。時間、環境、行動を整えることで、少しずつ再現できる力へ変わっていきます。






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