情報セキュリティコンサル、時給30万円を実現した驚異のAI仕事術


1か月かかっていた仕事が、わずか3時間に。しかもプログラミングは一切不要。
先日、私の師匠でもあるベテランコンサルタントに、驚くべきAI活用法を聞いてきた。
この方は情報セキュリティの専門家で、10年以上にわたり企業の監査業務を手がけている。ただし、ITエンジニアではなく、自分でプログラムを組むこともない。
そんな方がAIを使いこなし、驚異的な業務効率化を実現していた。
その成果は、従来1か月かかっていた監査の事前準備を、わずか3時間で完了させるというもの。
報告書の作成まで大幅に効率化し、時給換算で30万円という驚異的な生産性を実現したという。
いったい、どんな仕事術なのだろうか。
従来の監査業務は、大量の資料との格闘だった
企業の情報セキュリティ監査では、まず顧客から大量の資料を受け取る。
情報セキュリティに関する規程、システム構成資料、運用手順書、過去の監査報告書など、その種類は多岐にわたる。
従来は、こうした資料を紙に印刷し、一つひとつ読み込んでいた。当時、印刷だけで1週間かかっていたという
そして資料の内容を理解したうえで、監査対象となる部署への質問事項を整理する。
その後、情報システム部門や人事部門、現場部門などの担当者と順次ミーティングを行い、監査報告書を作成する。
つまり、従来の業務は次の流れだった。
顧客から届いた大量の資料を印刷して熟読する
監査の観点から質問事項を整理する
関係部署と順次ミーティングを行う
面談内容を整理・分析して監査報告書を作成する
重要なのは、単に資料を読むだけではないということ。
膨大な情報から問題点やリスクを見つけ出し、どの部署に何を確認するべきかを判断しなければならない。
この事前準備だけで、従来は約1か月かかっていたという。
AI導入後、事前準備が1か月から3時間に
ところが、AIの導入によって仕事の進め方が大きく変わった。
現在の業務は次のようになっている。
資料の読み込みと質問事項の作成
顧客から受け取った資料を、利用が認められたAI環境に読み込ませる。
AIが資料の内容を分析し、監査で確認すべき質問事項を自動的に作成する。
会議の録音と文字起こし
関係部署とのミーティングはすべて録音し、AIで文字起こしを行う。
これにより、面談内容を手作業で書き起こしたり、議事録を一から作成したりする負担を大幅に減らせる。
監査報告書の作成
最後に、AIが資料の分析結果や会議内容をもとに監査報告書を作成する。
驚いたのは、AIが作成した報告書をほとんど修正する必要がないという話だった。
こうした仕組みによって、従来1か月かかっていた事前準備が、わずか3時間になった。
もちろん、監査そのものには専門家による確認や判断が必要だ。しかし、人間が時間を費やしていた資料の整理や文書作成の多くをAIに任せられるようになったのである。
結果として、本人によれば時給換算30万円という生産性を実現したという。
なお、これは通常の給与としての時給ではなく、案件の報酬と投入時間から計算した数値である。
なぜ、そこまでの効率化が可能なのか?
ここが今回の話で最も興味深かった部分だ。
単に最新のAIを導入したから成功したわけではない。いくつもの条件が重なって、この成果が生まれている。
長年の経験と顧客からの信頼
まず、この方には10年以上にわたる情報セキュリティ監査の実績がある。
監査を担当する顧客企業では、これまで情報流出事故が発生していないという。これだけ大企業が被害に合う状態で1件も、である。彼の意見を聞けば大丈夫。得意先にそんな安心感を与えている。
もちろん、事故が発生していないことだけで監査の効果を証明できるわけではない。それでも、長年にわたる取引と実績が顧客からの信頼につながっていることは間違いなさそうだ。
また、情報セキュリティ監査には、社内の人間だけでなく、外部の専門家による客観的な視点が求められる場面もある。内部でAIで行う、というわけにもいかない。
AIを利用したからといって、その専門家としての価値がなくなるわけではない。
実際、この方は顧客にAIを利用していることを説明しているが、料金を下げてほしいという要求は一切受けていないという。
顧客が求めているのは、作業に費やした時間ではなく、専門家としての判断や監査の成果なのだろう。
Copilotを中心に複数のAIを活用
利用しているAIはMicrosoft Copilotが中心で、それ以外にも複数のAIサービスを組み合わせている。
AI関連の月額費用は2万円。
この費用で従来の大量の作業を削減できるのであれば、投資効果は非常に大きい。
さらに、メールやOneDriveに保存された情報もAIから参照できる環境を整備している。
過去の経緯や関連文書を横断的に利用できることが、AIの回答品質を高める重要な要素になっていると考えられる。
AIの性能以上に重要だった「情報の整理」
私が特に感心したのは、日々の情報管理の徹底ぶりだった。
この方は1人会社の社長であり、日々AIと対話しながら、フォルダー構成やそこに保存する情報を整理し続けているという。
必要な資料が適切な場所に保存され、関連する情報をAIが参照しやすい。
言い換えると、AIを賢く使うだけでなく、AIが賢く働ける環境を作っているのである。
世間ではプロンプトの書き方ばかりが注目されがちだ。
しかし、いくら優れたプロンプトを用意しても、AIに必要な情報が渡されていなければ、期待する成果は得られない。
逆に、仕事に必要な情報が整理され、業務の目的や背景までAIに伝わる環境であれば、AIは非常に強力な道具になる。
この違いは大きい。
この話から見えてきた3つのこと
今回の話を聞いて、私は3つのことを考えた。
①AIは、すべての人の仕事を公平に効率化するわけではない
AIを導入すれば、誰でも同じように生産性が向上する。
そう考えている人も多いかもしれない。
しかし、実際にはそう単純ではない。
同じAIを使っていても、業務知識、経験、情報へのアクセス、仕事の進め方によって成果は大きく変わる。
一部の人は作業時間を少し短縮する程度かもしれない。
一方で、仕事の進め方そのものをAIに合わせて再設計した人は、今回の事例のように劇的な成果を得られる可能性がある。
AIは全員の生産性を一律に高めるのではなく、使い方次第で生産性の差を大きく広げる。
私はそう考えている。
②AIは、曖昧な情報や専門的な判断を伴う仕事でも強い
従来、業務自動化といえば、毎日繰り返す定型業務が中心だった。
同じ手順で処理できる仕事を、Excel VBAやRPAなどで自動化する。
これは現在でも有効な方法だ。
しかし、生成AIの登場によって、自動化や効率化が可能な範囲は大きく広がった。
例えば、情報セキュリティ監査では、資料の中から重要な論点を見つけたり、複数の情報を比較して矛盾点を抽出したりする必要がある。
こうした仕事は、従来のプログラミングでは自動化が難しかった。
生成AIは、曖昧な文章の解釈や情報の要約、論点の整理などを支援できる。
もちろん、最終的な専門判断や監査品質に対する責任までAIに任せてよいわけではない。
それでも、従来は自動化できないと思われていた知的業務が、効率化の対象になってきたことは大きな変化だ。
私の師匠であるベテランコンサルは言う。
「2025年のAIは、90%の品質だった。自分が1割程度修正すれば問題なく使えた。しかし、2026年のAIは120%の品質。修正スべきところが見つからない。私が気が付かなかったところまで指摘してくれる。」
③1人会社は、AIと非常に相性がよい
そして、もう一つ注目したのが1人会社という働き方である。
一般的な大企業では、部署や役職によってアクセスできる情報が制限される。
情報システム部門、人事部門、営業部門などが別々に情報を管理しており、部門を横断した情報活用には調整や承認が必要になる。
それ自体は、情報セキュリティや内部統制の観点から重要な仕組みだ。
また、大企業であればあるほど、自分に関係がない無数のデータを閲覧できる。これがAIの回答品質を下げる。AIは、どこに必要なデータがあるか、わからないのだ。
一方、1人会社の場合は、事業に必要な情報を経営者自身が把握し、管理していることが多い。
適切な権限とセキュリティ対策があれば、仕事に必要な情報を横断的にAIへ渡しやすい。
意思決定も速く、業務の変更も自分の判断で進められる。そのコンサルは、10年以上、同じ得意先を担当している。実は、得意先の担当者よりも、得意先業務に詳しい。10年以上やり取りした、莫大な情報を保存している。
これはAI時代における大きな強みになるのではないか。
大企業には豊富な人材や資金、情報という強みがある。しかし、1人会社には情報を集約し、業務全体を素早く変更できるという強みがある。
AIによって、そのメリットがこれまで以上に大きくなる可能性がある。
ただし、顧客情報をAIへ渡すには十分な注意が必要
ここは誤解してほしくない点である。
今回の事例では、顧客にAIの利用方法を説明したうえで業務を進めている。
顧客から受け取った資料、メール、会議の録音データなどには、機密情報や個人情報が含まれている可能性がある。
そのため、AIを利用する際には、契約上の許可、情報の利用範囲、アクセス権限、外部サービスへのデータ送信、保存・削除方法などを適切に管理する必要がある。
顧客の了承を得ていれば何でもAIに入力してよい、というわけではない。
情報セキュリティを守る仕事だからこそ、AIの利用にも適切な情報管理が求められる。
これは今回の仕事術を参考にするうえで、必ず押さえておきたい前提条件である。
AI時代に本当に強いのは、どんな人なのか?
今回の話で印象に残ったのは、この方がITエンジニアではないということだ。
高度なプログラムを組んでいるわけでも、独自のAIシステムを開発しているわけでもない。
それでも、長年の専門知識と業務経験を土台に、AIを徹底的に活用している。
そして、日々AIと対話しながら、仕事に必要な情報を整理し続けている。
ここに重要なヒントがあると思う。
今後、AI時代に圧倒的な成果を出すのは、必ずしもAIの技術に最も詳しい人とは限らない。
むしろ、仕事の目的を理解し、業務の全体像を把握し、必要な情報をAIに適切に渡せる人なのではないだろうか。
AIに何を指示するかだけでなく、AIが仕事をできる環境をどこまで整えられるか。
これが、AI時代の生産性を左右する重要な要素になると私は考えている。










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