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「集中力ファースト」とは? AI時代に、成果を生む時間を取り戻す

  • 執筆者の写真: 伊賀上真左彦
    伊賀上真左彦
  • 7月27日
  • 読了時間: 7分



私の書籍『集中力ファースト(Focus First)』の発売が、2026年8月中旬に迫ってきました。



今回は、まだ聞き慣れない「集中力ファースト」という言葉について、その意味と、なぜ今この考え方が必要なのかをご紹介します。


私は2020年頃から、「集中力ファースト」を人生の目標として、「ディープワーク」をほぼ毎日行っています。その結果、数十年思い続けて実現できなかった、「本を出版する」「ITコンサルタントになる」「自分の会社を立ち上げる」「他社の役員になる」といった目標を、わずか5年ほどで全て実現しました。


私の人生を大きく変えた「集中力ファースト」と「ディープワーク」は、海外ではブームとなっていますが、日本で知っている人は少ないのが実情です。それを日本人に合う形に整理し、皆様にお伝えしたい。そういった思いでこの本を書かせていただきました。



集中力ファーストとは


集中力ファーストとは、一つの重要なことに集中し、仕事や勉強の成果を高める考え方です。


私たちは生産性を上げようとすると、つい「もっと速く」「もっと多く」と考えます。しかし、通知に反応し、会議を渡り歩き、細かな依頼を処理しているだけでは、忙しさは増えても、本当に価値のある仕事は前に進みません。


必要なのは、努力を増やすことではなく、力を注ぐ先を絞ることです。


そこで、仕事を詰め込む前に、集中できる時間と環境を確保します。カレンダー、会議、通知、仕事の優先順位、オフィス環境などを整え、重要な仕事に頭を使える状態をつくるのです。


つまり、集中力を本人の意思や根性だけに任せず、「守るべき経営資源」として扱うのが集中力ファーストです。



なぜ「Focus First」と呼ぶのか


集中する時間を守る取り組みは、「Focus Time」「Focus Block」「Thinking Time」「Protected Time」など、さまざまな名称で呼ばれています。


本書では、企業ごとに異なるこれらの仕組みをまとめて「集中力ファースト(Focus First)」と呼びます。


「First」には、二つの意味があります。


一つは、集中する時間を一日の早い時間に置くこと。もう一つは、集中力を仕事や人生の中で優先して守ることです。


午前中は集中しやすい人が多いため、朝に集中時間を置くのが代表的な方法です。ただし、最適な時間帯には個人差があります。大切なのは、自分やチームが集中しやすい時間を見つけ、ほかの予定より先に確保することです。


集中は、空いた時間に行うものではありません。重要な予定として、先に守るものなのです。



なぜ今、集中力ファーストが重要なのか


生成AIによって、文章、画像、分析、プログラムなどを生み出す速度は大きく上がりました。これからは、ただ手を動かす速さだけでは差がつきにくくなります。


一方で、「何を問うか」「どの案を選ぶか」「どこへ向かうか」を決める役割は、これまで以上に人間へ求められます。AIが速く走れる時代だからこそ、人には進む方向を深く考える時間が必要です。


ところが、現代の職場には集中を細切れにするものがあふれています。チャットの通知、頻繁なメール確認、目的の曖昧な会議、すぐに返事を求める空気です。


集中力ファーストは、この問題を「本人の頑張り不足」で終わらせません。働き方の仕組みを見直し、集中できる時間を組織として守ります。それによって、意思決定、学習、創造、仕事の品質を高めていきます。



ディープワークとの関係


集中力ファーストの土台にあるのが「ディープワーク」です。


ディープワークとは、邪魔の入らない環境で、頭に負荷のかかる課題へ深く集中する働き方です。カル・ニューポート氏が著書の中で提唱し、広く知られるようになりました。



難しい企画を考える、専門知識を学ぶ、重要な文章を書く、複雑な問題を解く。こうした仕事がディープワークに当たります。


両者の違いは、次のように整理できます。


  • ディープワーク:深く集中して行う仕事

  • 集中力ファースト:ディープワークを続けやすくする仕組み


個人が集中しようとしても、会議や通知に何度も邪魔されれば、ディープワークは長続きしません。


そこで集中力ファーストでは、集中時間をカレンダーで守る、会議を減らす、通知を抑える、集中できる場所を用意するといった環境づくりまで行います。


ディープワークを一部の人の特技で終わらせず、誰もが実践しやすい働き方へ広げる。それが集中力ファーストです。



集中は、成果だけでなく心も満たす


集中力ファーストには、「集中力を高め、守ることを、仕事や人生の優先事項にする」という意味もあります。


深く集中すると、普段は難しい高度な思考に取り組みやすくなります。仕事の成果を高めるだけでなく、新しい知識やスキルを身につける助けにもなります。


さらに、人は何かに没頭すると、時間や自分自身への意識が薄れ、充実感や達成感を得ることがあります。心理学で「フロー」、スポーツの世界で「ゾーン」と呼ばれる状態です。


多くの人は、趣味やスポーツでこの感覚を経験します。しかし、ディープワークの方法を取り入れれば、仕事や勉強でも深い没頭状態へ近づくことができます。


仕事や勉強が、仕方なく行うものではなく、深く没頭できる楽しいものになる。本書が目指しているのは、そんな状態です。



日本で集中力ファーストを始めるための5つの方法


大きな制度を、いきなり導入する必要はありません。まずは小さなチームで、次の取り組みを試してみてください。


1.集中時間を予定へ入れる


週に数回でも、60〜120分の集中枠をカレンダーに入れます。「企画書を完成させる」など、取り組むテーマは一つに絞ります。


2.通知を止める


集中時間中は、チャットやメールの通知を止めます。予定表やステータスで「集中中」と伝え、緊急時の連絡方法も決めておきます。


3.会議を見直す


目的が曖昧な会議や、情報共有だけの会議を減らします。「何を決めるのか」「誰の参加が必要か」を確認するだけでも、集中時間を取り戻せます。


4.最重要課題を毎日一つ決める


始業時に「今日、これだけは前へ進める」という課題を一つ選び、最も集中しやすい時間を使います。自分のより良い将来につながる仕事が適しています。何もかんでも行おうとすると、結局なにも実現できず1日を終わることもあります。1日1つで良いので「今日行うこと」を決めましょう。


5.チームで時間をそろえる


集中時間と交流時間を、チーム全体で分けます。


たとえば、午前中は一人で重要な課題に集中し、午後は情報交換や相談に使います。反対の時間配分でも構いません。重要なのは、チーム内で集中する時間帯をそろえることです。


常に誰かとつながり、反応を求められる状態は、人を疲れさせます。集中と交流を分ければ、一人で深く考える時間と、人と協力する時間の両方を守れます。



まずは、一つの集中枠からはじめる



まずは、一つの重要課題と、一つの集中枠から始めてみてください。

ディープワークは、1回あたり90分から120分、1日では4時間が限界とされています。まずは90分を目標に、1つの作業に集中してみましょう。


2026年8月中旬発売予定の『集中力ファースト(Focus First)』では、ディープワークの実践法に加え、会議や通知の見直し、集中スペース、回復、体調管理、AIとの役割分担まで、集中できる働き方を具体的に紹介しています。


「忙しく働く」から、「重要なことへ深く力を注ぐ」へ。


集中力ファーストは、AI時代を自分らしく働くための、新しい仕事の土台です。




追伸――私にディープワークを教えてくれた人

私に「ディープワーク」の重要性を教えてくださったのは、慶應義塾大学の岸博幸教授です。



2020年ごろ、エンジニアとして限界を感じていた私は、さまざまな人の講演を聴き、本を読みながら、これからの生き方を模索していました。


その中で参加した岸教授の講演は、私に大きな衝撃を与えました。あの一日が、私の生き方を変えたと言っても過言ではありません。


講演で特に心に残ったのは、次の三つです。

  • ディープワークを大切にする

  • スマートフォンの電源を切り、自分の頭だけで深く考える

  • 自分が本当にやりたいことを仕事にする


岸教授は、大学教授として活動する一方、テレビ番組への出演、プロレス団体の運営、地方創生の支援、音楽会社の役員など、幅広い分野で仕事をされています。関連性がないように見え、実際はすべての方向は一致しています。岸教授は、自分がやりたいことだけを仕事にしていたのです。


当時、一つの仕事をこなすだけで精いっぱいだった私にとって、一人でこれほど多くの仕事に取り組む岸教授の姿は、信じられないほどまぶしく見えました。そして、その生き方に強く心を動かされました。


「いつか岸教授のようになりたい」

その思いを胸に、私はあの日から走り続けてきました。


岸教授が重要性を教えてくださり、私自身も毎日実践してきたディープワーク。その考え方を一冊の本として形にできたこと、そして「仕事を楽しむための方法」を書けたことは、私の人生における大きな通過点です。


岸教授には、心から感謝しています。


私と岸教授との間には、まだ大きな実績の差があります。それでも、いつか少しでも近づけるよう、これからも自分の道を走り続けたいと思います。

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