
現代社会では、情報の洪水や絶え間ない通知により、集中力を維持することが難しくなっています。そんな中、ディープ・ワーク(深い集中状態での作業)は、効率を劇的に向上させるための鍵となります。ディープワークとは、注意を完全に集中させ、知的な作業に没頭する時間を指します。
マッキンゼー社によると、集中力を高めることで仕事や勉強の効率をなんと平均5倍にするとされています。1日の内20%の時間集中するだけで、効率を2倍に上げることが出来ます。
参考:マッキンゼー社
ディープ・ワークは海外では大手企業の多くで取り入れられていますし、ウインドウズやアウトルック、チームズにも『フォーカス・タイム』の名前で機能として取り込まれています。仕事を勉強の効率化のために最も重要な要素と言えますが、日本で知っている人はほとんどいないのが現実です。
ディープワークの基本原則
①環境の整備
ディープワークを行うためには、まず集中できる環境を整えることが重要です。静かな場所や、気を散らす要素を排除した空間を選びましょう。
望ましいもの
〇静かな環境
〇座りやすい椅子
〇作業しやすい机
〇植物(集中力を高め、精神を落ち着かせる効果がある)
避けるべきもの
×周囲の会話、他人の目線
×テレビやラジオの音
×電話(電源オフ)
×メール(通知オフ)
×電子機器(パソコンやスマホは電源を切ることが望ましい)
人間は電話やメールで集中力が途切れると、元の集中力に回復するのに23分を要するとされています。そのためディープ・ワークの最中は通知は必ずオフにするようにします。
電子機器の画面スクロールやちらつきは、人間の集中力を落とすとされます。ただプログラミングなどパソコンを使う作業で電源を落とすことは不可能です。先ほどの条件を全てを満たす事が難しい場合、できる範囲で構いませんので、環境を整えるようにしましょう。
海外のオフィスは個室が多く、大部屋もパーテーションで区切られている場合が多いです。これはディープ・ワークを効率的に行うためです。日本のオフィスでディープ・ワークを行うのは難しいのが実情で、テレワークなども活用しながら環境の整備を行ってください。
②時間のブロック化
ディープ・ワークの時間をスケジュールに組み込みます。例えば、1日2時間のディープワークを確保し、その時間帯は他の作業や会話を避けるようにします。
アウトルックやチームズでフォーカス・タイムとして設定し、メールやチャットの通知をオフにしましょう。海外では午前中を『ディープ・ワーク・タイム』として、会社全体で電話を禁止する事も一般化しています。
③目標設定
ディープ・ワークのセッションごとに、具体的な目標を設定します。これにより、集中力を維持しやすくなります。
④休憩の重要性
長時間の集中作業の後には、必ず休憩を取ることが必要です。休憩を挟むことで、次のディープ・ワーク・セッションに向けてリフレッシュできます。この休憩時間には一般にシャロー・ワークと呼ばれる集中力を要さない仕事を行います。具体的には会議、メールの処理、情報収集などがこれに該当します。
ディープ・ワークは集中力が高い人でも1日あたり4時間程度が限界とされています。それ以外の時間はシャロー・ワークを行う事になります。
海外では瞑想を仕事に取り入れる企業も多いですし、運動や散歩を好む人もいます。運動や散歩をすると脳内でエンドルフィンが分泌されます。幸福フォルモンとも言われるもので、気分が良くなり、集中力が高まることが知られています。
私が属するGAコンサルティングではアイディアが煮詰まったり、気分が落ち込んだ時は散歩をしながら打ち合わせを行います。お互いに気分が良くなりますので、前向きな会話を行えるメリットがあります。
ディープワークのメリット
生産性の向上
短時間で多くの成果を上げることができます。2時間程度で通常1日かかる仕事を終わらせることも出来ます。
質の高いアウトプット
集中力を高めることで、より質の高いアウトプットを生み出すことができます。クリエイティブな作業や問題解決において特に効果的です。
ストレスの軽減
ディープ・ワークにより、タスクを効率的にこなすことで、ストレスを軽減することができます。計画的に作業を進めることで、余裕を持って取り組むことができます。
注意点
効果が大きいディープ・ワークですが、1日に行えるのは最大でも4時間とされます。長時間無理に行うと疲労が蓄積し、体と精神に悪影響が生じます。適切にシャロー・ワークを間に挟み、回復しながら行いましょう。
仕事の種類によっては、会議やメールチェックが無い場合も存在します。その場合ディープ・ワークを無理に行うのは避け、ポモドーロ・テクニックを活用いただいた方が効率的です。
メール効率化の手法であるインボックス・ゼロでは、メールは数時間に一回、まとめて読むのが効率的とされています。ディープ・ワークと密接に係わった手法であることがわかります。
実践例①ビル・ゲイツ
彼もディープ・ワークを実践しています。彼は定期的に「考える週」を行っています。山など自然の中に籠り、デジタル機器を切った状態で思考の整理やビジネスの戦略を練っているとされます。
実践例②アルトマン氏
OpenAIのCEO、アルトマン氏もディープ・ワークを活用しています。
・午前中は会議などの予定は入れないことにしており、そこをディープ・ワークに活用しています
・朝食を食べません。これはファスティングと言われる健康法で、アドレナリンが分泌されることで集中力が高まる効果も期待できます
・朝起きた時、メールのチェックをしながらフルスペクトル・LEDライトの光を15分程度浴びます。日光と同じ波長の光が出るため眠気を覚ます効果を期待できます
アルトマン氏の方法は、彼が数年間かけて自分の体に適した方法を実験したもので、全ての人に適した方法ではないのでご注意ください。特に朝食を食べない方法は一般的には逆効果となることが多いです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
集中力を高めやすい時間は人によって異なります。一般に午前中が高めやすいという人が多いようで、欧米で午前中をディープ・ワーク・タイムに設定する企業が多いのもこれが理由です。何時くらいが良いかは、ご自分の体で試し、確かめる必要があります。
Comments