「集中力」は1種類ではない。3つの仕事モードを使い分けて仕事や勉強の成果を最大化する

更新日:8月29日

※本記事を動画にしました
「もっと集中して仕事をしよう」
そう考える人は多いと思います。しかし、ここには一つ大きな誤解があります。
仕事は、すべてを同じ強さで集中して行えばよいわけではありません。
新規事業を考える仕事と、メールを返信する仕事では、脳に求められる状態がまったく違います。
重要なのは、集中力を常に最大にすることではなく、仕事の種類に合わせて集中状態を切り替えることです。
私は、仕事をするときの集中状態を大きく次の3つに分けています。
ディープワーク(深く集中したモード)
フローワーク(慣れた仕事を少ない負荷で行うモード)
シャローワーク(浅い仕事)
この3つを意識して使い分けるだけで、仕事や勉強の進め方は大きく変わります。
逆に、この区別をせずに一日中メール、チャット、会議、電話に反応し続けていると、人はほぼ一日中「シャローワーク」の状態になります。
人間は、集中することで知的労働の生産性が最大5倍に上がると言われています。逆に考えると、1日中集中できていない人は、5分の1の知能で戦い続けている状態、ともいえます。
しかも問題は生産性だけではありません。
仕事の切り替えが増えるほど、疲労やストレスも増えます。
「一日中忙しかったのに、重要な仕事は何も進んでいない」
そんな状態を避けるためにも、3つの集中状態を理解しておくことが重要です。
① ディープワーク――最も価値の高い仕事をする時間
ディープワークとは、一つのテーマだけに意識を向け、深く思考する状態です。
通知を切り、メールを閉じ、会議にも出ず、目の前の一つの仕事だけに集中します。
代表的なのは、
新しい事業の構想を考える
経営戦略を作る
論文や書籍を書く
難易度の高いプログラムを開発する
複雑な問題を分析する
といった仕事です。
こうした仕事は、メールを確認しながら、チャットに返信しながらではなかなか進みません。脳の処理能力を一つのテーマに集中させる必要があります。
集中力が高まり、自分や時間といった感覚が薄れた状態を「フロー」と呼びます。ディープワークはこの「フロー状態」を自分が望むタイミングで、連続的に発生させるテクニックです。これにより普段はできない高度な思考を行うと同時に、ストレスを下げ、深い幸福感や達成感を得ることができます。
ディープワークを続けられる時間には限界があります。一般には、1回あたりは最大2時間、1日あたりは4時間が現実的な限界とされています。しかし、この数時間が非常に大きな価値を生みます。
そしてディープワークの重要な特徴は、成果だけでなく本人の能力も高めることです。
難しい問題に集中して取り組む経験を繰り返すと、思考力や専門性そのものが鍛えられていきます。
数回試した程度では大きな変化は感じないかもしれません。しかし、数か月行えば周囲が能力の変化に気が付き、半年、1年と続ければ、もはや別人ともいえる能力が身につきます。
② フローワーク――集中したまま仕事を進める時間
すべての仕事に、ディープワークほど強い集中が必要なわけではありません。
そこで重要になるのが、私が「フローワーク」と呼んでいる状態です。フローワークとは、ある程度慣れている仕事を、余計な割り込みを減らしながら一つずつ処理していく働き方です。
例えば、
PowerPointの資料を作る
データを整理する
定型的な分析を行う
慣れたプログラムを書く
報告書をまとめる
といった仕事です。
ディープワークほど脳に高い負荷はかかりません。そのため、適度に休憩を入れれば比較的長時間続けることができます。
ポイントは、マルチタスクにしないことです。
資料を作りながらメールを見る。
データを整理しながらチャットに返信する。
このような状態になると、フローワークは簡単にシャローワークへ落ちてしまいます。
学生時代の勉強を思い出しましょう。数学の勉強をしているときに、英語の暗記を同時並行で行う人はいません。数学の勉強が一段落した後、次に英語の勉強をしますよね。
1度に処理するのがは1つだけ、つまり「シングルタスク」が、実際には最も効率が良く、脳や体へのストレスも小さくなります。場合によっては、時間を忘れるほど作業に入り込む「フロー」に近い状態になることもあります。
組織の仕事の大部分は、おそらくこのフローワークで処理するのが理想です。ディープワークで方向を決め、フローワークで実行する。この組み合わせが強いのです。
③ シャローワーク――必要だが、増やしすぎてはいけない仕事
そして3つ目がシャローワークです。これは、高い集中力を必要としない仕事です。
例えば、
メールへの返信
チャットの確認
電話対応
定例会議
スケジュール調整
簡単な事務処理
などです。
シャローワークは決して「悪い仕事」ではありません。会社を動かすためには絶対に必要です。
顧客に返信しなければ仕事は進みませんし、同僚との情報共有や会議も必要です。
問題は、シャローワークが一日を支配してしまうことです。
朝、メールを開く。
返信している間にチャットが来る。
チャットに答えていたら会議が始まる。
会議が終わったら、またメールがたまっている。
気づけば夕方です。
一日中働いていたにもかかわらず、新しい企画も作っていない。勉強もしていない。重要な資料も進んでいない。自分が成長することもなく、毎日同じ仕事の繰り返し。
現代のオフィスでは、この状態が非常に起きやすくなっています。しかも、頻繁なタスク切り替えは人を疲れさせます。みなさん、重要な仕事をしているときに誰かに話しかけられ、イラッとしたことはありませんか?割り込みは人間を消耗させます。
「忙しいのに成果が出ない」という問題の正体は、仕事量ではなく、シャローワーク比率が高すぎることなのかもしれません。
3種類の中で、最優先するべきなのはディープワーク
ディープワーク、フローワーク、シャローワーク。もちろん、仕事では3つすべてが必要です。
その中でも、意識して確保しなければ消えてしまうのがディープワークです。
メールは放っておいても来ます。
会議も放っておけば予定表に入ってきます。
チャットも勝手に届きます。
しかし、
「新しい事業について2時間考える」
「自分の専門分野を3時間勉強する」
「将来の戦略をじっくり考える」
という時間は、誰も勝手には作ってくれません。
だからこそ、自分から先に予定表へ入れる必要があります。
優秀な経営者やクリエイターの多くが、自分だけで考える時間を非常に重視するのも、このためでしょう。
たとえば、OpenAIのCEO、サム・アルトマンは午前中は人と会わず、自分の思考時間として使うとされています。
また、GAFAMをはじめとする多くの企業では、
「フォーカスタイム」
「フォーカスブロック」
「ミーティングフリー」
といった仕組みを導入し、メールやチャットの通知をオフにすること、「午前中の会議や雑談を非推奨にし1人で集中して作業することを推奨しています。
要するに、
重要なことを考える人の時間を、会議や連絡で全部埋めてはいけない
ということです。
「会議ばかりの会社」から新しいものが生まれにくい理由
ここで組織について考えてみます。
社員の予定表を見てください。
朝から夕方まで会議が並び、その間にメールとチャットへ返信している。
もし多くの社員がこの状態なら、その会社には大きな問題があります。
既存業務を回すことはできます。
しかし、新しい価値を生み出す時間がほとんどありません。
結果として、
新しい商品やサービスが生まれない
立ち上げた新規事業がことごとく失敗
長期的な戦略を考えられない
社員の専門性が高まらない
「仕事をしている感」はあるのに成果が増えない
という状態になりやすくなります。
さらに、常に誰かに呼ばれ、常に何かに反応しなければならない働き方は、精神的にも疲れます。
従業員のエンゲージメントを高めたいのであれば、福利厚生を増やす前に、「一人で集中して仕事ができる時間があるか」を確認してみてもよいでしょう。結果として仕事の品質が上がり、社員の能力ややる気も高まり、ストレスも減ります。
集中時間の確保は、お金をほとんどかけないでも行うこともできます。
午前は「集中」、午後は「対話」
では、3つの集中状態をどう配置すればよいのでしょうか。
一つの方法が、時間帯によって仕事の種類を分けることです。
例えば、
午前中
ディープワークを中心にする。
会議、電話、チャットをできるだけ減らし、企画、執筆、分析、勉強など、頭を使う仕事を行う。
午後
フローワークとシャローワークを増やす。
資料作成、会議、打ち合わせ、メール、情報共有などをまとめて行う。
こうすると、
「一人で集中する時間」
と
「人と協力する時間」
を両立できます。
人間は、常時他人とつながり続けると消耗します。
しかし、ずっと一人で仕事をしていても疲れます。
だから、集中 → 実行 → 対話というリズムを作ることが重要なのです。
「集中力ファースト」という考え方
私は、特に重要な集中時間を一日の前半に置く考え方を、「集中力ファースト」と呼んでいます。
この言葉には二つの意味があります。
一つは、集中する仕事を、一日の最初に持ってくること。
メールや会議を先に始めてしまうと、そのまま他人の仕事に巻き込まれます。
だから、自分にとって最も重要な仕事を先に行う。
もう一つは、集中力そのものを、仕事や人生の優先事項として考えること。
私たちは仕事を改善しようとすると、
「もっと長く働こう」
「もっと早く処理しよう」
「もっと多くの仕事を同時にやろう」
と考えがちです。
しかし、本当に改善すべきなのは「時間」ではなく「集中の質」かもしれません。
同じ1時間でも、通知に邪魔されながら行う1時間と、一つのテーマに完全に集中した1時間では、そこから生まれる成果は大きく違います。
集中力が高まれば、仕事の質が上がる。
勉強の効率も上がる。
専門性も高まる。
ストレスが減り幸福感も高まる
その積み重ねが、個人の市場価値を高め、企業の売上や競争力にもつながっていきます。しすて皆さんの人生は、より豊かなものになります。
そう考えれば、集中力は単なる「仕事術」の話ではありません。
個人にとっても、企業にとっても、最優先で改善する価値のある経営資源なのです。
明日の予定表に、まず1時間入れてみる
いきなり働き方を全部変える必要はありません。まず試してほしいのは、とても簡単なことです。
明日の午前中に、1時間だけ予定を入れてください。
予定の名前は、
「企画」
でも、
「集中時間」
でも、
「ディープワーク」
でも構いません。
その1時間だけは、メールを閉じ、チャットを切り、スマートフォンを離し、一つの重要な仕事だけを進めます。
おそらく最初は、1時間でも意外と難しいと感じるでしょう。それで構いません。
集中力もまた、鍛えることができる能力だからです。
ディープワークで考え、
フローワークで実行し、
シャローワークで人とつながる。
この3つを意識的に使い分ける。
それだけでも、「忙しいのに成果が出ない」という働き方から抜け出す大きな第一歩になります。
そして、その最初の一歩が、
「集中力ファースト」――まず集中から一日を始めること
なのです。









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