勉強の効率を最大5倍に上げる学生のためも「ディープワーク式勉強法」「3つの集中モード」を使い分けると効率が上がる。

更新日:8月31日

「集中して勉強しなさい」
子どもの頃から、何度も言われてきた言葉だと思います。
しかし、私はこの言葉には少し問題があると考えています。
なぜなら、勉強には強く集中すべき勉強と、それほど強い集中を必要としない勉強があるからです。
難しい数学の問題を理解するときと、英単語を100個復習するときでは、脳の使い方はまったく違います。そこで、仕事について紹介してきた「3つの集中モード」を、学生の勉強にも当てはめてみましょう。
ここでは集中状態を、
集中モード | 学生の場合 |
ディープワーク | 難しいことを理解する、考える、模試を解く |
フローワーク | 暗記、復習、簡単な計算、慣れた問題を解く |
シャローワーク | LINE、SNS、友人や家族との会話、遊びなど |
と考えます。
この3つは、どれが優れているという話ではありません。
大切なのは、目的に合わせて使い分けることです。
ディープワークは「できないことを、できるようにする時間」
ディープワークとは、一つのことだけに意識を向け、深く考える時間です。学生の場合、最もわかりやすいのが「難しい科目」です。
たとえば数学。新しい公式が出てきたとき、公式だけを丸暗記するなら、それほど強い集中は必要ありません。
しかし、
「なぜ、この公式になるのか」
「この問題では、なぜこの公式を使うのか」
「途中のこの変形が理解できない」
と考え始めると、話が変わってきます。
これはディープワークです。
数学だけではありません。英文法で理解できない部分を調べる。物理の現象を頭の中で組み立てる。歴史上の出来事がなぜ起きたのかを考える。
自分がまだ理解していないものを、理解できる状態に変える。ここにディープワークを使います。
LINEの通知を出したまま、YouTubeを流しながらやるような勉強ではありません。
スマートフォンを遠ざけ、目の前の一科目、一問、一テーマだけに集中します。
人間は集中力を高めることで、知的能力が5倍に上がる、とも言われています。最も集中した状態がディープワークです。ただ、ここで注意すべきことがあります。ディープワークはとても疲れる作業で、大人でも1回あたり90分から120分、1日あたり3から4時間が限界とされています。
つまり、朝から寝るまで、ずっとディープワークを行う、ということは出来ないのです。
また、1回ディープワークを行うと、その後に10から20分、休憩時間を入れる必要があります。ご飯やおやつを食べる前にディープワークを行うようにすると良いですね。
一般に集中力は、成長にしたがって1回に集中できる時間が伸びていきます。ディープワークを可能な最大時間は個人差も大きいですが、一般には以下のような時間をイメージしてください。
年齢別のディープワーク可能時間のイメージ
年齢 | 1回の「全集中」の目安 | 上限のイメージ |
小学校低学年 | 15〜25分 | 30分程度 |
小学校高学年 | 25〜40分 | 45〜50分程度 |
中学生 | 30〜50分 | 60分程度 |
高校生 | 45〜60分 | 60〜90分程度 |
大学生 | 60〜90分 | 90〜120分程度 |
大人 | 60〜120分 | 120分程度 |
ディープワークは脳の疲れが大きく、行った後に回復のための時間が必要になります。
大人の場合、午前中に2時間ディープワークを行い、その後に昼ごはん、2時間軽い会議をして夕方からもう2時間ディープワーク、ということもできます。
しかし学校や塾に通っている学生の場合、「軽い会議」のような回復の時間を持つことが難しいです。そのため、120分の長いディープワークは控え、中高生の場合「45~50分のディープワーク+10分間の休憩」程度を目安にするのがお勧めです。まずは学校などの授業で、1コマ完全に集中してみる、というのを目標にすると良いでしょう。
模擬試験もディープワークに向いている
もう一つ、ディープワークを積極的に使ってほしいのが模擬演習です。
受験生なら、過去問や予想問題を本番に近い状態で解いてみる。時間を測り、途中でスマートフォンを見ない。音楽も止める。できれば本番と同じ時間だけ集中する。これは、知識を確認するだけではありません。
長時間集中して問題を解く練習そのものになります。
スポーツ選手が試合を想定して練習するのと同じです。
日頃からこうした集中状態を繰り返しておけば、本番でも「問題を解くことだけに意識が向いている状態」に入りやすくなる可能性があります。いわゆる「フロー」や「ゾーン」に近い状態です。
実際、学生の「学習におけるフロー」と学業成績について調べた研究では、両者には正の関連が報告されています。ただし、現時点では「フローになれば必ず点数が上がる」という因果関係まで証明されたわけではありません。
それでも、本番になって初めて2時間集中する人と、普段から2時間集中して問題を解いている人では、後者のほうが本番の環境に対応しやすいでしょう。
模試は、知識のテストであると同時に、集中力のリハーサルでもあります。
勉強時間の多くは「フローワーク」がいい
ディープワークは負荷が高い。難しいことを理解し続けるのは疲れます。実際の勉強時間の多くは、もっと負荷の低いフローワークでよいでしょう。
「フローワーク」は私が便宜上そう呼んでいるもので、ある程度できることを、余計な割り込みを入れず、一つずつ集中して進める状態です。一般に図書館や自習室は勉強の効率が良いとされます。また、類似した作業をまとめることで効率を上げる「タスクバッチング」、25分作業して5分休む「ポモドーロ・テクニック」。こういった古くから行われている効率化方をまとめ、整理したのがフローワークです。
特徴は、集中力を完全に高めるのではなく、意図的に少し落とす点にあります。例えばディープワークは周囲に人が一切いない状態、例えば自分の部屋などで行う必要があります。
対してフローワークには、図書館や自習室が適しています。周囲はある程度静かですが、人がいて、時々そちらに集中が持っていかれるような場所です。
例えば、フローワークには以下のような勉強が適しています。
英単語を覚える。
漢字を書く。
年号を覚える。
一度理解した数学の公式を使って、基本問題を繰り返す。
計算問題をどんどん解く。
教科書を読み返す。
こうした勉強です。
難しいことを一から理解する必要はありませんが、きちんと集中する必要はあります。
そして、現実には受験勉強のかなりの部分はこちらになると思います。
ディープワークで難しいことを「理解する」。
フローワークで「覚える」「慣れる」「速くする」。
この組み合わせです。
勉強というと、難問に挑戦することばかりが注目されます。しかし、テストでは「知っている」「覚えている」「時間内に処理できる」ことも非常に重要です。
そのためには、フローワークをたくさん積み重ねる必要があります。
シャローワークは「勉強しない時間」と割り切る
3つ目がシャローワークです。浅い作業、という意味になります。ほとんど集中していない状態です。そのかわり、多数の作業を同時並行で行える(マルチタスク)というメリットがあります。ディープワークとフローワークはあくまでシングルタスク、つまり1回に1つの作業しかできません。
仕事の場合はメールや会議などがシャローワークになりますが、受験勉強の場合、私は学習そのものにはあまりシャローワークを持ち込まないほうがいいと思っています。
仕事の場合、データの整理をしながら時々かかってくる電話に対応する、ということが必要になります。ただ勉強の場合、「数学の公式を覚えながら英単語を暗記する」なんてことを行う人はいませんし、行う意味もありません。シャローワークは勉強では必要ないのです。
その代わり、
家族と話す。
友達と話す。
LINEを見る。
SNSを見る。
遊ぶ。
運動する
食事をする。
散歩する。
こうした「勉強から離れる時間」に使います。
人間は勉強するだけの生き物ではありません。特に家族や友達との対話は大切です。
一日中机に座っているより、一度勉強から意識を離し、気持ちを切り替える時間を持ったほうが、その後の勉強にも戻りやすくなります。
シャローワークは、ディープワークやフローワークで疲れた脳を回復させる、という目的があります。
特にディープワークは脳の疲れが大きいため、終わった後に休憩やシャローワークを行うことで脳を回復させる必要があります。
学校が無い日であれば、
朝9時から11時までディープワークで新しい数学の公式を習得する
その後に12時まで家族や友人と会話や散歩を行う
というのは、非常に良い方法です。
ただし、「LINEを見れば脳が回復する」という意味ではありません。
SNSを30分見るつもりが、気づいたら3時間。
これは休憩ではなく、単純に3時間使ったことになります。
ここが非常に重要です。
特に、スマホやTVゲームは脳や目を疲れさせる傾向があります。気分が良くなったとしても、脳と目が疲れてその後の勉強の効率が落ちるのでは、「回復」とは呼べませんので注意してください。
受験生ほど「シャローの上限」を決める
極端な話をしましょう。
朝起きてLINEを見る。
返事をする。
Xを見る。
YouTubeを見る。
またLINEが来る。
少しゲームをする。
気がついたら夜になっていた。
勉強時間は1時間。
その日は楽しいかもしれません。しかし、それが毎日続けば、数か月後、数年後の自分には大きな影響が出ます。
だからシャローワークを禁止する必要はありません。
時間を決めればいいのです。
まずディープワークとフローワークの時間を確保する。
そして疲れてきたら、30分あるいは1時間、友人や家族と話したり、LINEを確認したりする。終わったら、また戻る。
シャローを主役にするのではなく、ディープとフローの間に挟む回復時間として扱うわけです。これだけでも一日の使い方はかなり変わります。
朝一番をLINEから始めない
私は特に、受験生には起きてすぐシャローワークを始めないことを勧めます。
朝起きて、最初にLINE。
そのままInstagram。
YouTube。
気がつけば1時間。
これは少々もったいない。
朝起きたら、まずディープワークかフローワークを始める。
数学など難しい科目に取り組めるならディープワーク。
まだ頭が本調子でなければ、英単語や復習などフローワークから入っても構いません。
そして疲れてきたところで、シャローを入れます。
ただし、「すべての人間は午前中が最も頭がいい」という意味ではありません。
朝型・夜型には個人差があり、認知能力が高まりやすい時間帯にも違いがあります。高校生などでは、朝型・夜型と時間帯の組み合わせによって成績や認知課題の成績が変わる可能性も報告されています。
重要なのは、自分の貴重な集中時間を、最初からLINEやSNSに明け渡さないこと。こちらです。
こんな一日にするとわかりやすい
たとえば休日の受験勉強なら、
朝は数学など理解が必要な科目をディープワークで行う。
その後、英単語や基本問題などをフローワークで進める。
疲れたところで30分ほど休み、家族と話したりLINEを確認したりする。
午後には過去問を本番と同じ時間で解く。これもディープワークです。
その後は答え合わせや復習、暗記などをフローワークで進める。
夜は勉強を終え、友達と話したり好きなことをしたりして、きちんと寝る。
ずっと全力ではありません。深く集中する時間、長く勉強する時間、休む時間を分ける。
これがポイントです。
そして、集中力の土台は「睡眠」
そして最後に、勉強の効率を上げるうえで絶対に忘れてはいけないものがあります。
睡眠です。
寝る時間を削れば、その分だけ勉強できる。
一見すると、そのように思えます。
しかし、睡眠不足は注意力や判断力の低下、学業成績の低下などと関連しています。厚生労働省も、睡眠を心身の休養だけでなく、子どもの脳と身体の成長に重要なものと位置づけています。
睡眠は記憶にとっても重要です。
過去約50年の研究をまとめた分析では、学習する前の睡眠不足だけでなく、学習した後の睡眠不足も、新しく覚えた内容の記憶に悪影響を与えることが確認されています。睡眠は翌日の学習に備えると同時に、学んだ記憶を定着させる役割を持つと考えられています。PubMed Central (PMC)
つまり、「睡眠時間を2時間削って、2時間余計に勉強する」という作戦は、必ずしも2時間分の得にはなりません。
翌日の集中力まで落ちれば、むしろ損をする可能性があります。
学生はどのくらい眠ればいいのか
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、小学生は9〜12時間、中学生・高校生は8〜10時間を参考に睡眠時間を確保するよう勧めています。
大学生など18歳以上については、CDCでは18〜60歳を「7時間以上」としています。日本の厚生労働省は成人について「6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保」としていますが、同時に個人差が大きいことも強調しています。
目安をまとめると、
年齢・学年 | 睡眠時間の目安 |
小学生 | 9〜12時間 |
中学生・高校生 | 8〜10時間 |
大学生・18歳以上 | 少なくとも7時間程度を一つの目安に、個人に必要な時間を確保 |
成長期の皆さんにとって、睡眠は脳と体を成長させる、という重要な意味があります。
成長のために必要な時間を削って勉強しても無意味です。
「受験生だから6時間で我慢する」というルールはありません。
むしろ受験生だからこそ、眠る。
体を回復させる。
脳を休ませる。
覚えたことを定着させる。
そして翌朝、もう一度集中する。
こちらのほうが合理的です。
楽しく、すがすがしく勉強しよう
勉強は苦しんだ人が勝つ競技ではありません。
長時間机に座っていた人が勝つとも限りません。
難しいことを理解するときはディープワーク。
覚えたり繰り返したりするときはフローワーク。
疲れたらシャローワークで勉強から離れる。
そして、きちんと眠る。
この繰り返しです。
どうせ同じ1時間勉強するなら、ぼんやり3時間机に座るより、集中した1時間にしたほうがいい。
そして、どうせ学生生活を送るなら、毎日睡眠不足でイライラするより、よく眠り、気持ちよく起き、集中して勉強し、遊ぶときは遊ぶほうがいい。
集中力は、勉強のためだけの能力ではありません。自分の時間を、自分が本当にやりたいことに使うための力です。










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