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集中力を高める睡眠のコツ——眠る時間は、明日の成果への投資

  • 執筆者の写真: 伊賀上真左彦
    伊賀上真左彦
  • 8月17日
  • 読了時間: 6分

このブログでは、書籍『集中力ファースト』の内容をもとに、「集中力」という観点から、仕事と勉強の効率を高めるための睡眠術を紹介します。









集中力を高めたいとき、作業方法や時間管理ばかりを工夫していないでしょうか。


しかし、どれだけ優れた方法を使っても、睡眠が不足していれば、思考速度や判断の精度は落ちてしまいます。睡眠は余った時間に取る休息ではなく、脳・体・感情を整え、翌日の仕事や勉強の成果を最大化するための投資です。


睡眠は、脳と体を整えるメンテナンス時間

私たちは、睡眠を「疲れたから眠るもの」と考えがちです。しかし、睡眠中も脳と体は重要な仕事を続けています。



記憶と情報を整理する

日中に経験したことや学んだ情報は、起きている間にすべて整理されるわけではありません。睡眠中の脳は、必要な記憶を残し、重要でない情報を整理していると考えられています。


十分に眠ることは、単に眠気を取るだけではありません。前日に学んだ知識を翌日の仕事で使える状態に整えることでもあります。


感情を整える

睡眠には、不安や怒り、悲しみなどの感情を整理し、心の負担を和らげる働きもあります。

嫌な出来事があっても、よく眠った翌朝には少し気持ちが軽くなっていることがあります。これは、睡眠中に脳が記憶と感情を整理しているためだと考えられます。


睡眠が不足すると、感情をうまく制御できなくなり、小さな問題にも強く反応しやすくなります。仕事で冷静な判断をするためにも、睡眠は欠かせません。


脳と体を回復させる

睡眠中には、深く眠るノンレム睡眠と、脳が比較的活発に働くレム睡眠が交互に現れます。

深いノンレム睡眠は脳と体の回復に関係し、レム睡眠は記憶や感情の整理に関わると考えられています。どちらか一方だけではなく、一晩を通して両方の睡眠が繰り返されることに意味があります。


また、睡眠中には脳内の老廃物を洗い流す仕組みが働くことも示されています。睡眠不足が続けば、このメンテナンスが十分に行われず、頭の働きが鈍くなったり、将来の認知機能に影響したりする可能性があります。



集中力の土台をつくる

睡眠が不足すると、集中力、判断力、記憶力だけでなく、仕事への意欲や感情の安定も損なわれます。


睡眠の意味は、疲労を回復させることだけではありません。翌日に深く考え、正しく判断し、落ち着いて行動するための土台をつくることにあります。


だからこそ、睡眠時間を削って仕事の時間を増やすという発想から、必要な睡眠時間を先に確保して仕事の予定を組むという発想へ切り替えることが大切です。



1.自分に必要な睡眠時間を記録する

必要な睡眠時間には個人差があります。まずは起床時刻を毎日そろえたうえで、成人の目安とされる7〜9時間の睡眠を一定期間試してみましょう。


翌日に次の項目を記録すると、自分に合う睡眠時間を判断しやすくなります。

  • 起床時の気分

  • 日中の仕事の効率

  • 午後の眠気

  • 就寝時刻と起床時刻


週末の寝だめだけでは、平日の睡眠不足を根本的に解消できません。毎日の記録から、自分が安定して働ける睡眠時間を探すことが大切です。


推奨される睡眠時間は年齢によって大きく変わります。成長期は成人と比べ、かなり長い睡眠時間が必要ですので注意してください。

年齢と睡眠時間の目安

年齢・学齢

睡眠時間の目安

1〜2歳

11〜14時間

3〜5歳

10〜13時間

小学生

9〜12時間

中学生・高校生

8〜10時間


厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」PDFより。子ども向けの説明は紙面15ページ以降にあります。



2.寝る1〜2時間前から「減速」する

日中の仕事モードから、いきなり眠りに切り替えるのは難しいものです。就寝前の1〜2時間を、脳と体の速度をゆるやかに落とす「減速レーン」と考えましょう。


具体的には、次の習慣が役立ちます。


  • スマートフォンやパソコンの強い光を避ける

  • 部屋の照明を少し暗くする

  • カフェインは就寝の6〜8時間前から控える

  • 寝酒を習慣にしない

  • 毎晩、同じ順番で入眠準備をする


たとえば「入浴→ストレッチ→10分間の読書→就寝」という流れを繰り返すと、その手順自体が眠りに入る合図になります。


入浴する場合は、就寝の60〜90分前を目安に、38〜40度程度のお湯に10〜15分ほど入ります。熱いお湯に長時間入るより、少しぬるいと感じる温度で体温をゆっくり変化させるのがポイントです。


3.短時間で眠りやすくなる方法を用意する

布団に入っても眠れないとき、「早く眠らなければ」と焦るほど頭がさえてしまいます。そんなときのために、自分なりの入眠方法を用意しておきましょう。ここでは筆者も行っている米軍式睡眠術をご紹介します。


筋肉を順番にゆるめる

仰向けになり、顔、肩、腕、指、腹、脚へと、上から下に向かって力を抜いていきます。力が抜けにくい部分は、一度軽く力を入れてから脱力すると緩めやすくなります。


呼吸を整える

「4秒吸う、4秒止める、4秒吐く」という一定のリズムで呼吸します。呼吸に意識を向けることで、頭の中の雑念を減らしやすくなります。


静かな風景を思い浮かべる

湖や星空、木陰など、自分が安心できる風景を具体的に想像します。頭の中を心配事から穏やかなイメージへ切り替える方法です。



4.昼寝は30分以内にする

睡眠不足を補おうとして長時間昼寝をすると、その夜の眠りが浅くなり、翌日も寝不足になる悪循環に陥りやすくなります。


昼寝をするなら30分以内を目安にします。眠い日は、昼寝で帳尻を合わせるより、夜の就寝を早めて睡眠を立て直すほうが安定します。



5.寝室を「眠るための場所」に整える

睡眠時間が足りていても、寝室の環境が悪ければ、回復の質は下がります。

見直したいポイントは次のとおりです。


  • マットレスや枕が体に合っているか

  • 室内が暑すぎないか

  • 湿度が高すぎたり、乾燥しすぎたりしていないか

  • 街灯やカーテンの隙間から光が入っていないか

  • 騒音や通知音が眠りを妨げていないか


室温は18度前後、湿度は40〜60%程度が一つの目安です。ただし、快適な温度には個人差があります。「室内は涼しく、布団の中は暖かく」を基本に、自分が眠りやすい状態へ調整しましょう。


スマートフォンは手の届かない場所に置き、難しければ通知を切るだけでも、睡眠を邪魔する刺激を減らせます。



6.起床時刻と朝の光をそろえる

睡眠習慣を安定させるうえで、就寝時刻以上に大切なのが起床時刻です。休日を含めて毎日ほぼ同じ時刻に起きると、体内時計が整いやすくなります。月曜日の朝、「学校や会社に行きたくない」と思う人は多いです。これは土日の「寝溜め」によって体内時計が狂い、「時差ボケ」に近い状態になっているケースも多いとされます。


起床後は、できるだけ1時間以内に朝の光を浴びましょう。晴れた日は窓辺に立つだけでなく、ベランダや玄関先へ出ると、より明るさを感じられます。軽い散歩やストレッチを組み合わせるのも効果的です。



まとめ

集中力を高める睡眠の基本は、次の3点です。

  • 睡眠時間を記録し、自分に必要な量と質を意図して設計する

  • 就寝前の刺激を減らし、毎晩同じ入眠手順をつくる

  • 寝室環境、起床時刻、朝の光を整える


睡眠時間を削って働くことは、一時的には仕事の時間を増やしているように見えます。しかし、長期的には集中力や判断力を落とし、成果を出すまでの時間を増やしかねません。


今夜きちんと眠ることは、明日の集中力を守るだけではありません。記憶を整理し、感情を整え、脳と体を回復させることでもあります。


睡眠は、人生から差し引かれる時間ではなく、翌日の自分をつくる時間なのです。

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