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「そこそこ」のスキルを掛け合わせて勝つ──タレントスタックというキャリア戦略

  • 執筆者の写真: 伊賀上真左彦
    伊賀上真左彦
  • 2 日前
  • 読了時間: 12分


仕事で成功するためには、「何か1つの分野で圧倒的な能力を持たなければならない」と考える人は少なくありません。


ネットで検索すれば誰が業界トップか簡単にわかってしまう現代において、圧倒的な成果を出したい場合、業界トップになるのは「ほぼマスト」です。ほとんどの人が業界トップの人に仕事を依頼してしまうため、2位以下の人は仕事がほとんど回ってこないのです。


プログラミングなら日本トップクラス。営業なら社内1位。文章力ならプロの作家レベル。

もちろん、それができれば強いです。


しかし現実には、1つの能力だけで業界トップを目指すのは簡単ではありません。


時間もかかりますし、競争相手も多い。しかも、その分野そのものの価値が下がれば、自分の市場価値まで一緒に下がってしまう可能性があります。


そこで知っておきたいのが、「タレントスタック(Talent Stack)」という考え方です。



タレントスタックとは何か

タレントスタックは、1つのスキルを極限まで磨くのではなく、複数のスキルを「そこそこ」のレベルまで育て、それらを掛け合わせることで大きな価値を生み出す考え方です。


ここでいう「そこそこ」とは、決して初心者レベルではありません。


プロとして十分にお金をもらえる。ただし、その分野のトップではない。そのくらいのイメージです。


例えば、

  • ITスキル70点

  • 文章力70点

  • 講師力70点

という人がいたとします。


それぞれ単独では、その分野のトップには勝てないかもしれません。

しかし、IT × 執筆 × 講師と組み合わせると、一気に競争相手が減ります。


「ITに詳しくて、文章を書けて、人にも教えられる人」となると、該当する人はかなり少なくなります。


100点の能力を1つ作るのではなく、70点の能力を複数持つ。


この掛け合わせによって、「比較されにくい自分」を作るのがタレントスタックです。



1つの能力でトップを取るのは難しい

例えば、プログラミングだけで日本トップを目指すとします。


当然ですが、そこには非常に優秀な人が大量にいます。学生時代からプログラミングを続けている人もいれば、毎日何時間もコードを書いている人もいます。


その中で1位を取ろうとすると、とてつもない時間と努力が必要になります。自分が勉強している間、他の人も勉強を継続します。永久に追いつけない可能性も高いです。


しかし、「プログラミング × 業務改善」ならどうでしょう。

さらに、


「プログラミング × 業務改善 × 研修」

ならどうでしょう。


掛け合わせるほど、競争相手は減っていきます。つまりタレントスタックは、

競争に勝つというより、競争そのものを減らす戦略でもあるのです。


強い1本槍を作るより、複数の武器を組み合わせた方が、勝てる場所を増やしやすいということです。



私自身も「そこそこ」の組み合わせで仕事をしている

私自身も、このタレントスタックの考え方をかなり使っています。


自分では、「圧倒的なITエンジニア」「圧倒的な作家」「圧倒的な講師」だとは考えていません。


それぞれ「そこそこ」です。


しかし、

  • IT

  • 業務自動化

  • 執筆

  • 研修

  • 集中力・ディープワーク


といった複数の分野を長く続け、それらを組み合わせています。

例えはこちらの本。既存のOutlookの本とは毛色が異なります。 ・私が10年以上コールセンターで働く中で身につけた効率化、誤送信低減、メール自動化の知識を体系化 ・欧米のメール効率化テクニック(インボックスゼロなど)を日本で初めて紹介 単に能力勝負ではなく、今までの経験の応用とアイディアで勝負しているのです。



その結果、「Outlook研修」「集中力研修」といった比較的小さな分野で、検索上位を取れるポジションを作ることができました。



1つひとつの能力で天才になる必要はありません。重要なのは、

自分がすでに持っている能力を、どう組み合わせるかなのです。



タレントスタックと「ニッチトップ」は相性がいい

タレントスタックと非常に相性がいい考え方があります。

それが、「ニッチトップ」です。


ニッチトップとは、比較的小さな市場でトップを取る考え方です。


巨大市場には、当然ながら大企業も優秀な人も集まります。


そこで戦うと、

  • 価格競争

  • スピード競争

  • 資金力勝負

  • 人材獲得競争

になりやすくなります。


いわゆる「レッドオーシャン」です。


もちろん、そこで正面から戦える人もいます。


ただ、多くの人にとって、これはかなり消耗する戦いです。


それよりも、自分の複数のスキルを組み合わせ、小さな市場を作ってしまう。こちらの方が現実的です。


例えば、

  • 「ITが苦手な管理職向けのデータ整理」

  • 「製造業 × 現場改善 × データ活用」

  • 「地方の中小企業向け海外展開サポート」

というように、対象とする人や場面を細かく絞ります。


そこへ自分のタレントスタックを持ち込む。


すると、「このテーマなら、この人」というポジションが作りやすくなります。




まずは自分が3から5年、人生の全てを注ぎ込んでも良いテーマを選ぶ

タレントスタックとニッチトップでどこかの市場を取りに行く、もしくは作りに行くとき、まず行うべきはテーマを決めることです。一般に1つの市場でトップになるには、3から5年程度の時間がかかります。そう考え、着実に積み上げましょう。


1年程度でトップになれる市場なら、他人も1年で追いついていきます。時間がかかることは、ライバルの参入を防ぐ効果もあるのです。


自分が取り組むべきテーマは、自分が持っている3Sと、興味から選びます。AIに自分の状況、考えを教えた上「100個案を出して」と言ってみる手もあります。



注意すべきは、1つのテーマにあなたの人生の3から5年を捧げる、ということです。並大抵の覚悟でできることではありません。ですので、「自分がやりがいを感じられるテーマ」を設定してください。


例えば、あなたが「模型作り」が好きだったとします。ここでトップに立ちたい。でも模型業界はとても大きく、そこでトップに立つのは容易ではありません。そこで次に、「あなたがトップになれる」と思えるサイズまで、市場を分割していきます。 例えばあなたが「恐竜模型」が好きで、「3Dプリントのスキルが有る」とします。

「3Dプリントを活用した博物館向け展示模型」というジャンルを作り、そこでトップになりましょう。


ここで重要なのは、あなたがトップになれると確信できるところまで、市場を小さくすることです。


例えば「3Dプリントを活用した博物館向け展示模型」でトップになることが困難と考えるなら、「3Dプリントを活用したトリケラトプスの博物館向け展示模型」というように、さらに市場を小さくします。


ここで重要なのは「小さい業界でトップになる」ことです。




大きな市場で2位より、小さな市場で1位

ニッチ市場は、当然ながら市場規模そのものは小さくなります。そのため、何十社も巨大企業が存在できるような市場ではありません。


しかし、個人や小さな会社が安定して仕事を続けるには、十分な市場である場合があります。


むしろ大企業から見ると、「市場が小さすぎて参入する意味がない」という領域だからこそ、競争が少ない。


その場所でトップを取れれば、長期間、安定したポジションを築ける可能性があります。


本来は「世界トップ」を狙うのがベストです。儲かります。ただそれが困難な場合、「日本でトップ」でも商売としては成り立つ可能性があります。


行っては行けないのは「会社内でトップ」です。これでも会社組織で生きていくには大きな武器です。しかし、会社から出た瞬間に価値をなくしますし、大きな利益にはつながりません。


基本的に「ニッチトップ」は、年収数千万円、もしくはそれ以上を目指す際に重要にあるテクニックです。会社内でトップになっても、その領域にはたどり着けません。



AI時代ほど「1つのスキルだけ」は危険になる

そして、タレントスタックはAI時代との相性もよいと考えています。


理由は単純です。1つのスキルだけに依存すると、そのスキルがAIに置き換えられた時の影響が大きいからです。


例えば、

  • 業務理解

  • 顧客とのコミュニケーション

  • データ分析


という3つの能力を組み合わせて働いている人がいたとします。


仮にAIがデータ分析の一部を代替できるようになったとしても、

  • 「現場を理解する力」

  • 「顧客へ説明する力」

が残っています。


さらにAIを使えば、これまでより高速に分析できるようになる。

結果として、その人の価値は下がるどころか、むしろ高まる可能性があります。


つまりAI時代には、AIに奪われない1つの能力を探すという発想よりも、複数の能力を組み合わせ、AIもその中に取り込む方が、壊れにくいキャリアを作りやすいのです。



まずは「自分の70点」を探す

タレントスタックを作る時、「新しい資格を取ろう」と考える必要はありません。


むしろ最初にやるべきなのは、すでに自分が持っている70点の能力を洗い出すこと

です。


例えば、

  • Excelが得意

  • 人に説明するのが得意

  • 営業経験がある

  • 製造業に詳しい

  • 英語がそこそこできる

  • SNSで文章を書くのが好き


こうした能力を並べます。


そして、「この中の2つ、3つを組み合わせたら何ができるだろう?」と考えます。


自分では普通だと思っている能力でも、組み合わせると突然珍しくなることがあります。



3Sが土台、その上にタレントスタックを作る


本書では、タレントスタックの前に、3Sという考え方も紹介しています。

  • Skill=能力・資格

  • Score=実績

  • Social=人脈・信頼


この3つです。


3Sによってキャリアの土台を作り、その上に複数のスキルを組み合わせてタレントスタックを作る。さらに、その組み合わせがもっとも生きる小さな市場を探して、ニッチトップを狙う。


この順番です。3Sを無視して資格や肩書きだけを増やしても、「資格コレクター」になってしまいます。


一方で、実力があり、実績があり、信頼がある。その上で複数の専門性が組み合わされていれば、仕事の単価や信頼は少しずつ高くなっていきます。



時間が経つほど有利になるキャリアを作る

タレントスタックのよいところは、年齢とともに強くなりやすいことです。


  • 20代では、スキルが1つしかないかもしれません。

  • 30代になれば、2つ、3つと増えていく。

  • さらに実績が積み上がり、人脈も増える。


40代、50代になると、それらの掛け合わせが簡単には真似できないものになっていきます。


だから本書では、20代、30代で無理に人生の勝負を決めなくていいと考えています。


むしろ、長い時間を使って3Sとタレントスタックを積み上げ、「人生のピークを40代以降に持っていく」という設計の方が現実的です。


若い時に一発逆転する必要はありません。

  • 毎年、何か1つできることを増やす。

  • 実績を残す。

  • 人との信頼関係を増やす。


それを10年、20年続ければ、誰にも簡単にはコピーできない組み合わせが完成します。



「普通の人」だからこそ使える戦略

タレントスタックの最大の魅力は、天才でなくても使えることだと思います。


むしろ、「自分には圧倒的な才能がない」と感じている人にこそ向いています。


  • 1つの能力で100点を取れなくてもいい。

  • 70点を3つ、4つ持っていればいい。

  • そして、その組み合わせが生きる場所を探す。


それだけで、「他の人と比較されにくい仕事」を作ることができます。

自分を無理に誰かに近づけるのではなく、


自分が持っているものを組み合わせ、自分専用の市場を作っていく。

これがタレントスタックの考え方です。


AI時代のキャリアでは、「何の専門家になるか」と同じくらい、「何と何を組み合わせる人になるか」を考えることが重要になるのではないでしょうか。



海がなかったらどうするか


タレントスタック&ニッチトップで業界トップになったとします。次ぐに起こる問題が「海がない」です。つまり、お金が流れる市場が存在せず、ビジネスとして通用市内ケースです。これはレアケースではなく、正直一般的なことです。


数年を投じたビジネスが、思ったほど儲からなかったとします。失望は相当なものでしょう。しかし、ここで落ち込んで終わりにしてはいけません。


皆さんはすでに、「〇〇業界でトップ」という実績と、そこへ到達するまでのノウハウを手にしています。そのノウハウ自体を商品として売ることもできますし、得られた経験を別の業界へ持ち込み、再びトップを目指すこともできます。


なにせ、一度は1つの業界でトップクラスまで上り、一定の信用や知名度を得たのです。その経験は、次の挑戦でも大きな武器になります。ぜひ、自分が「やりがい」を感じられる周辺分野へ挑戦してください。1回目よりも、はるかに効率よく上位を目指せるはずです。



「自分は〇〇業界でトップになった」


この実感と誇りは、キャリア上の武器になるだけではありません。自信となり、その後の人生を支える「生きがい」にもなります。


ただし、「タレントスタック×ニッチトップ」は比較的勝ちやすい戦略ではあるものの、必ず大きな利益が出るとは限りません。そのため、最初は「副業」として始めることをおすすめします。本業で生活を支えながら、生活に影響しない範囲で、長く続けられる形を作るのです。


新規事業の世界には「千三つ」という言葉があります。千件挑戦して、ものになるのは三件程度という意味です。それほど、新しいビジネスを当てるのは簡単ではありません。


だからこそ、「失敗したら終わり」という戦い方をしてはいけません。副業などを活用し、失敗しても生活が揺らがず、何年でも続けられる状態を作ってください。時間を味方につければ、試行錯誤の回数を増やすことができ、結果として成功確率も高めやすくなります。


実は私自身、新しいビジネスで「完全に失敗した」と感じた経験はほとんどありません。私にとってはほぼ全てが成功です。


理由は単純で、始める前から「成功」の条件を複数設定しているからです。例えば、次の3つです。


  • 大きな利益を出す

  • 自分のスキル・実績・人脈が増える

  • 社会に良い影響を与える


このうち、どれか1つを満たせれば「成功」と考えます。


特に2つ目の「スキル・実績・人脈が増える」、3つ目の「社会に良い影響を与える」は、利益だけを成功条件にするより達成しやすいものです。


新規事業は、「儲かったか、失敗したか」の二択で考える必要はありません。たとえ利益が小さくても、次の挑戦に使える能力や実績、人脈が残ったのであれば、その経験は次の成功のための資産になります。




まとめ

  • 100点を1つ狙うより、70点のスキルを複数掛け合わせて希少性を作る

  • タレントスタックとニッチトップを組み合わせると競争を減らせる

  • 3Sを土台に積み上げれば、AI時代にも壊れにくいキャリアを作れる

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