
皆様、『フロー』という言葉をご存じでしょうか?集中力を高めることで仕事や勉強の効率を上げる手段です。スポーツでも使われることがある言葉で、ボールがスローモーションで動いているように見えるなど、人間の脳力を大幅に引き上げる手段とされています。
以前紹介した『ディープ・ワーク』に類似した手法と言えます。今回は『フロー』との違いについてもご説明します。
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フローとは
フローはハンガリー出身のアメリカの心理学者、ミハイ・チクセントミハイ(Mihaly Csikszentmihalyi)によって提唱された、仕事と勉強の効率を大幅に高める手法です。時間を忘れるほど集中し、没頭している精神的な状態とされています。この状態では、活動そのものが楽しく、効率的かつ創造的に取り組むことができます。
小説やゲームに熱中し徹夜で休憩もせず読んだ経験がある人も多いでしょう。これもフローの一種ということができます。
フローとディープワークの違い
どちらも集中力を高め仕事や勉強の効率を上げるという点では共通しています。一番大きな違いは集中力の差で、一般にフローはディープワークより低い集中力で行います。これにより、ディープワークほど高度な思考は出来ない反面、長時間行う事ができます。ディープワークは一日4時間が限界とされますが、フローは時間的な制限はなく、体力と精神力が続く限り継続することができます。
フローは行う作業と自分の現在の脳力のレベルが一致していることが条件となります。
自分の現在の脳力を超える高度な思考を行うディープワークとは異なります。
つまり、現在の自分の脳力で処理できる作業はフロー、処理できない難しい作業はディープワークという使い分けになります。現在の自分の脳力では処理できない高度な処理であっても、一度ディープワークを行て「習得」すれば、次回からフローやシャローワークで同じことを行えます。ディープワークは1日4時間が限界です。そのため極力毎日ディープワークを行って自分の脳力を上げるのが重要になります。
フローとディープワークはどちらも実行中は幸福感に満たされ、清々しい気分になります。ただ終わった後、強い疲労が訪れ、次に精神を集中させる前には休憩や、メール処理などのシャローワークを行う必要があります。この3つの働き方はセットで、適切に組み合わせることで仕事や勉強の効率を大きく上げることができます。

フローの特徴
フロー状態には以下のような特徴があります:
明確な目標
何をすべきかがはっきりしている。
即時のフィードバック
行動の結果がすぐにわかる。
挑戦とスキルのバランス
課題の難易度と自分の能力が適切に釣り合っている。
集中力の向上
周囲の雑音や気晴らしが気にならなくなる。
自己忘却
自分自身の存在を忘れ、活動に完全に没頭する。
時間感覚の歪み
時間が早く過ぎる、または遅く感じる。
集中力を極限まで上げるため、周囲に人が居てはいけないディープワークと異なり、フローは周囲に人がいる状態でも行う事ができます。ただ、集中しているため他人から話しかけられてもあまり反応はできない場合もあります。
なぜ図書館は集中できるか
図書館はフローを行うのに比較的適した場所です。図書館について考えることで、フローを効率的に使うことができます。
社会的証明
他の人が集中しているのを見ると、その行動が適切であるという証拠として受け取る
模倣行動
人は自然と他人の行動を模倣する傾向があり、特に集団の中ではその傾向が強くなる
静かな環境の影響
他の利用者が集中していると、自分もその環境に適応しようとする
動機付け
他の人が一生懸命に何かに取り組んでいる姿を目にすると、自分も頑張ろうという気持ちになり、モチベーションが高まる
ここで考えていただきたいのが日本のオフィスです。図書館と比べうるさいですよね。個室が多く、パーテーションも完備された海外のオフィスとは大きな違いがあります。日本のオフィスは集中力を要さない、誰でもできる簡単な仕事であるシャローワークを行う事に特化しすぎています。目線や音を防ぐパーテーションを一部に設置するだけで、だいぶフローが行いやすい環境になります。
実はフローを行いたい場合、図書館ではなく自宅の部屋でも十分行えます。なぜ図書館に行く必要があるかと考えると、勉強が好きではないから、という可能性があり得ます。一流大学に現役で合格するような人は「勉強が楽しい」と感じている人が多く、それによりディープワークやフローの状態に入りやすくなっている場合があります。
ディープワークやフローは、独自に習得し使いこなしている人もいますし、訓練を重ねて習得する人もいます。皆様もぜひチャレンジしてください。
好きでないことでフローの状態になりたい場合は、ゲーミフィケーションなどの活用し極力好きになる努力も必要です。他人から見てまったく面白そうに見えないスポーツでも、大会で上位に入れる実力が付けばたいていは面白くなります。実力が高まってから好きになるか、好きだから実力が付くのかはケースが分かれます。いずれにせよ好きになる努力をして、それでもダメな場合、別の事にチャレンジした方が良いかもしれません。
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