
ビジネス先進国である欧米では、ビジネスで電話と対面の会議を行う事はほぼなくなっています。代わりに使われるのがメールです。日本人がメールを使う時間は1日に2時間程度とされますが、、欧米はなんと6時間弱。1日の大半の時間をメールに割いています。3倍程度の差があるのです。
日本の労働生産性は欧米の2から3分の1です。この極端な差が生じている、大きな原因の1つが、伝えられる情報の量です。
1分間で伝えられる文字数
会話(電話や会議) 300文字(アナウンサーに最適とされる速度)
メール 600文字(熟練者が読める文字数)
メールは電話や対面会議の2倍の情報を同じ時間で伝えることができるのです。
もう一つ忘れてはいけないのが人間の記憶力の問題です。人間は会話の内容を25から50%程度しか記憶していないとされます。1分間で300文字話せるとしても、記憶できるのは75文字150文字が限界です。それに対してメールは消えることがありませんので、600文字全ての情報が残ります。
1分間で伝えられる実際の文字数
会話(電話や会議) 75から150文字
メール 600文字
メールと会話では、1分間に伝えられる情報量がなんと、4から8倍も異なります。
これが欧米では電話や対面会議をビジネスで使わなくなった理由です。
実際には、メールの場合相手が事前に内容を吟味してから送信できるのに対して、会話の場合、話しながら内容を考える人が多く、無駄な内容を多く含んでいます。1分間に300文字話せるのは訓練を受け、原稿を読むアナウンサーの場合で、普通の人は7割にも達しないでしょう。圧縮、吟味された内容を相手に送れるメールと、会話とでは単位時間当たりで伝えられる情報量が10倍以上違うと考えて良いでしょう。
皆さんもビジネスの効率を上げたい場合、電話や対面の会議を減らし、メールの時間を増やすことを検討してみましょう。
会話にもメリットはある
単位時間あたりに伝えられる文字情報の量でメールより劣る会話ですが、メールにはないメリットもあります。
表情、ジェスチャーなど、非言語的な情報
情報の即時フィードバック
信頼関係の構築(同じ場所で同じ状況に身を置く)
複雑な問題の解決(複数回やり取りが必要な交渉に適する)
会話は、文字としてやり取りできる情報は少ないですが、それ以外の情報をやり取りしているとも言えます。
会議はシャロ―ワーク。気分転換を兼ねて行う
集中力を高めることで仕事や勉強の効率を平均5倍に上げる、ディープワークという手法があります。非常に効果が大きいテクニックですが、高い集中力が必要で、長い人でも1日4時間が限界とされています。1日8時間勤務とした場合、残りの4時間は集中力を要さない仕事、シャロ―ワークにあてることになります。実は電話や会議はシャロ―ワークに分類されています。
欧米では午前中をディープワークタイムとして、会議や電話を行わず、1人で集中して仕事をするのが一般的となっています。その後疲れを癒すためにシャロ―ワークとして会議や集中力を要さない軽い仕事を行います。人によってはその後、2回目のディープワークを行うこともあります。
日本人は常時神経を張り詰め、休憩を取らないことを美徳とする傾向があります。欧米はそうではなく、極限まで集中と、集中力を要さない軽い仕事を交互に行う事で負荷を下げつつ、効率を上げているのです。
実は私は対面の会議が好きで、積極的に行っています。特に相手が他社の場合、極力相手の会社にうかがいます。オフィスの作り、会社の雰囲気など、メールでは知れない多くの情報を知ることが出来ます。業務自動化コンサルという職業柄、タイミングを計って相手の会社に改善案を提案することもあります。欧米ではほとんど行う事がないとされる対面の会議ですが、目的を持ち、タイミングを計算して行えばメールでは得られないものを得ることが出来るでしょう。
軽い散歩も効果的
私は時折、散歩をしながらの打ち合わせを行う事があります。散歩は体にも良い影響がありますし、脳内でエンドルフィンというフォルモンが分泌される、というメリットもあります。エンドルフィンは別名、幸福フォルモンとも言われ、人間の感情を落ち着けたり、集中力を増す効果も期待できます。散歩をしながらの打ち合わせは会議室で行うそれと異なり、お互いが晴れやかな気持ちで、前向きに話すことが出来る効果があります。議論が見詰まった場合や、気分が落ち込んだ時に行うと特に効果的です。
欧米は社内に散歩できるコースを作ることが多いですし、瞑想ルームがある企業も多いです。瞑想は気分を落ち着かせ、集中力を高める効果があります。散歩と近い効果を期待できます。
電話は緊急時の情報伝達にのみ使う
先ほど会話の4つの効果についてお伝えしました。電話に限って考えるとどうでしょう?
表情、ジェスチャーなど、非言語的な情報
情報の即時フィードバック
信頼関係の構築(同じ場所で同じ状況に身を置く)
複雑な問題の解決(複数回やり取りが必要な交渉に適する)
電話では相手の表情やジェスチャーは伝わりません。同じ場所に身を置くことも出来ず、信頼関係の構築も限定的です。相手に図や表を見せて説明することも出来ず、複雑な問題の解決も限定的です。電話が持つメリットは、「情報の即時フィードバック」にこそあると言って良いでしょう。実際に海外では緊急時の連絡に関してはいまだに電話を使用しています。
ある外資系企業の会長にお話をうかがったことがありますが、その会社で会長に電話を出来るのは、アメリカ本社の1人と、秘書の1名のみということです。秘書は「その日の予定が急遽変更されたとき」のみ電話が可能で、それ以外のケースやメールやチャットで済ませるそうです。
起業家の堀江貴文さんが「電話をする人とは仕事をするな」という発言を行ったことがあります。あれを常識の逆を言う「逆貼り」と判断した人が多かったようですが、実は欧米でメールを使うことは相手の時間を強制的に奪う、失礼な行為とされているのです。欧米の人と仕事を行う事に慣れている人は、日本の前時代的な働き方に耐えられない、という人もいるでしょう。
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